ゆーや、おつかれさん
さ、今夜も、愛人帝王学のレクチャー始めるわよ
あら、今夜も、ゆーやから発言したいことがあるの?
「『実にトホホな大惨事』ってあったので、
ボクはてっきり、ひろっしーが泥酔し過ぎて
メイクラブの前に寝入ったか
勃たなかったことを予想していました。
フツー、『トホホ…』って言ったら、
その程度のものじゃないですか?」
「…ちょっと、待って、
1つ気になる発言があったのだけど、
ひろっしーって、一体何なの?」
「ヒロシ師範のことです
ヒロシ師範が額を切って血液プッシャーで
ふなっしープッシャーを連想させてしまったから
つい、ひろっしーと呼んでしまいました
しかも、ひろっしーはキデ’s men で
一番凡庸なお方だと思っていましたが、
こんなとんでもないエピソードをお持ちとは
大変感服いたしました
なかなか他のメンズと匹敵せんばかりの
存在感のある先輩愛人です
見る目が変わりました」
「…そーだったの
そーいうネーミングセンスの卓越さは、
何だかトオルに通ずるものがあるわね
あら、露骨にイヤそーな顔をしないの
何があろうとも、先輩愛人は慕わないとダメよ
ごめんなさい、話をさえぎってしまったけど、
まだ続きがあったのよね」
「キデねーさんは、トホホな大惨事で
片付けていましたけど、あれはまさに大事件で、
一歩間違えればひろっしーは
打ちどころ悪くてお亡くなり
になっていたかもしれないし
とてもじゃないけど、
トホホなレベルではなかったと思います
確かにねーさんの価値基準は
常人と比べてぶっ飛んでいるとは思いますが
こんな大変なエピソードが公開するに足らん
ショボい出来事だったからと判断して
永らくお蔵入りされていたのも驚きです
おまけに随所にねーさんの人命軽視の姿勢が
見られて引きましたが、中でも一番酷かったのは
ひろっしーよりもジミーチュウのバッグに
『いつまでもしつこく流血する、ひろっしーの
血が付かないことに心砕いた』って
明らかにキデねーさんが、
バッグ > 人命
となっている箇所で、めっちゃ引きました
それから、ボクは何が何でもねーさんの前だけでは
大怪我、命の危機は迎えまいと決心もしました」
あら、言わせてもらいますけどね、
あのジミーチュウのバッグは
15万もして、
しかもその日のお昼に新宿の伊勢丹で
一目惚れして買ったのだけど、
買うのに大変だったのよ
あの時の出張引率責任者があたしだったけど
総勢8名の航空券、ホテルをあたしが手配して
しかもあたしのカードで立て替えていたものだから
いざ伊勢丹でカードを切ろうとしたら
エラーが何度も出て使えなかったの
きっと立て替えとかで限度額一杯まで
利用しちゃったからでしょうね
でも、カードはこの1枚しか持ってきていなかったし
あとは、地方銀行のキャッシュカードしかなくて
全然現金を下ろせそーにもなかったし
そもそも最初から手持ちの現金は少なかったし
どーしたものかと、ホント、目の前が真っ暗になったわ
でも、あたしの基本姿勢は、
自分の欲望に忠実であること
どーしても手に入れて、その夜に控えていた
ひろっしー、おっと、失礼、
ヒロシとのデートに使いたいと思ったのよ
だから、あたしは生まれて初めて、その時に
消費者金融の無人ブースへ赴いて
現金を借りることにしたのよ
しかもそのとき、身分証明書の類を
一切持参していなかったからメールとブースのFAXを駆使して
自宅から夫に身分証明書のコピーを
取り寄せたりとかして実に大変だったのよ
…うふふ、でもね、これもまた実に面白い体験だったけどね
本当に本人なのかどーかの確認のために
生年月日を西暦と和暦で言わされるのはもちろん
干支まで質問されるのも想定内だったわ
だけど、星座まで質問されたのには
一番驚いたわ、なるほど、自分の本当の
星座じゃないと、咄嗟には答えられないわよね
なかなか相手もやるじゃないってね…
そんでもって、どーせ借金するならって、
現金で30万ばかり借りてみたわ
初回は無金利キャンペーンしてたしね
それだけ入手するのに苦労したバッグだから、
ついついひろっしーより、バッグの方を
気にかけてしまうのも、人情ってものでしょ?
あら、すっかり脱線が過ぎてしまったわね
今から遅ればせながらに、本題に入るわよ
昨夜のレクチャーで話したことが、
2年前の第1回目の東京出張で
ひろっしーとあたしの間で起きたことね
当時のあたしは曲がりなりにもまだ「貞淑妻」だったし
ひろっしーとメイクラブをするだなんて
…ま、少しは想ったりしたけど
だからと言って、まさか実行させようとは思っていなかったわ
でも、その2年後の第2回目の東京出張では
もー、最初からひろっしーとメイクラブを
することしか考えていなかったわね
だから、出張に関する業務連絡をするからという口実で
その時に初めてひろっしーとLINE交換したのだけど
そのLINEでもあたしはひろっしーに念を押したわね
「出張当日の夜は、コロナのせいで会食はありません
各自自由に夕飯をとることになります
前回の仕切り直しをしたいと思うので、
その日はお酒を控えてくれたら嬉しいです
詳しいことは、当日の夕方に連絡します」
2回目の待ち合わせ場所は、
新宿にある小さなシャンパンバーだったわ
先に一人で飲んでいたあたしが、
ひろっしーを呼びつけたのよ
ほら、あたしってば、無類のシャンパン好きじゃない?
夕飯はそんなにガッツリと食べるタイプじゃないから
シャンパンをメインにブルスケッタとかをかじる程度ね
そこのバーで夕飯代わりに既にグラスで何杯か頂いていたわ
一方、東京に不馴れな、ひろっしーは
今夜の夕飯をどーうしたものかと
きっと思いあぐねているだろうから
既に酔いが回り始めていたあたしは思い付きで
ひろっしーに電話をしたのよ
「…もう夕飯済ませた?まだでしょ?
あたし、新宿で一人で飲んでいるの
今からここへ来ない?
ここで夕飯を済ませてしまえばいいわ
場所が分からないなら、今から地図を送るから
それを運転手に見せて、タクシーで来ればいいじゃないの」
…うふふ、今度はあたしが既にシャンパンで
大分出来上がっていて、
一方、ひろっしーは駆けつけて来てくれた時には
あたしの言いつけをちゃんと守って完全な素面だったの
今度は立場が完全に入れ替わっていたわけよ
うふふ、勘のいい、ゆーやは
既にこれが何を意味するのか、もーお察しね
え、今からもー悪い予感しかしないよ、ですって?
元々、行く先々でカオスを巻き起こすあたしだけど、
そこへ禁断のアルコールが加勢することにより
更なる混迷が待ち受けていることになるのよ
あぁ、2度までも私のカオスに巻き込まれてしまう、
実に可哀想なヒロシ!
あら、もーこんな時間
今日のレクチャーはここまでよ
この続きは、また明日ね
しっかりと学んで、
素敵な愛人さんになってね♡
間違っても、トオルみたいな
ポンコツ愛人になってしまってはダメよ
それでは、またね〜
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