おつかれさん
そうそう、昨夜の話の続きね
ショートスリーパーの私は明け方に目が覚めたわ
うちの昭和枯れすすきの夫をはじめ、
私の愛人たちは皆、無呼吸症候群で
その不規則ないびきの不快さ、うるささと言ったら、
この上ないのだけど
おぉ、若いこーきは静かな寝息で
長い四肢を伸ばしてうつ伏せで眠るこーきの寝姿は
グラビアから切り取ったかのような美しさで
寝返りをうつのでさえ美しく見入ってしまったわ
でもね!!
こともあろうに、近視用の眼鏡を用意するの忘れて
コンタクトを外した裸眼では思うように
美しいこーきの寝顔までは拝めなかったのが心残りだったわ
1人でたっぷりと時間をかけて朝風呂から出てても
若いユーキはぐっすりと
長時間眠れるだけの体力があるのね
まだすやすやと眠っていたわ
私が昨夜のベビードールを身にまとって
座卓で化粧水とかをはたいていたら
ようやくユーキも目覚めて
でもまだ寝ぼけたような顔をして
私と向かい合って座ったの
何もセットをしていない彼の前髪が
掻き上げた彼の手で、サラサラと落ちてくるのに
見とれていたわ
彼は私のベビードール姿を見ると
こう言ったの
「そういう下着みたいなのを着て
お酒の相手をしてくれるお店に行ったことあるよ」
その後、私たちは何の会話もなく
昨夜仕入れた食料から互いに黙々とパンを食べたわね
翌朝の私たちは性的な匂いどころか
昨夜よりももっと酷く白々とした雰囲気になっていて
居心地悪いのと、どこか寂しいのと
昨夜の2人への郷愁…と色んな想いがないまぜになって
何とも言えない気持ちでいたのよ
でもその一方で、今日のこのことをすっかりネタにして
自分の中でしっかりと昇華してやろうという想いもあったから
私は彼に質問してみたの
「…昨夜、手まんしたじゃない、今まで関係を持ってきたひとは
それに対して、別に痛いとか言ったりしなかったの?」
「…別にこれまでそんなこと言われたことないです」
憮然として彼にそう言われて、過去の女性たちは
彼に遠慮して本音を伝えなかっただけなのでは?
とも思ったりしたけど
同時に私はひょっとしたら、
旧世代モデルの女体 なのかしら?
今の若い、新世代モデルの女体
は高速手まんも
難なく対応出来るのかも知れないわね、
ってしばらく惨めな想いでいたりもしたの
それから私たちは別々にタクシーに乗って帰ったわ
自宅に着いた頃、ユーキからラインが入ったのよ
「ほんといろいろありがとうございました!!
ちゃんとできんかってすみません」
その後すぐに私も、気にしないでって返事を送ったけど、
それに既読が付くことはなかったわ
彼の中でもやはり忸怩(じくじ)たる想いがあって
それを振り払いたいがために、
私に一方的にラインを送り付けたのでしょうね
私は私で、それから1週間ばかり
思いがけなく貰って来た
彼の負の想念がなかなか取れずに
実に重苦しい日々を過ごす羽目になったのよ
メイクラブは不発に終わったとしても
腕枕で添い寝までして、一晩中同じ空間で
過ごしたのが余り良くなかったみたいね
若さゆえに、負に対するパワーも強く
トオルの想念の強さなど比ではなかったわ
彼の日頃の鬱積した、鬱々とした感情が
私の中で広がっていつまで経っても抜けずにいたの
そこで、私は再び、
不思議の国のアリスになっちゃった
ユーキの精神世界に放り込まれてしまったわけ
あー、ユーキはいつもこんな風に感じているのね
これでは鬱病になるのも時間の問題ねって感じたわ
否、既にもう発症しかかっているのかも
ユーキとの逢瀬からちょうど1週間後の月曜の夜に
私はオンラインで第1愛人でもある教祖様に
ユーキの負の想念のパワーが思いの外、強すぎて
「ユーキ落とし」に難儀したことを伝えたら
教祖様はこう言ったわ
「そのうちに、肌を重ねなくても
会うなり、あるいは言葉を少し交わしただけで
その人が 陰 か 陽 のどちらの 想念
を強く持っているのか
見極められるようになります
それが分かるようになったら、今度はキデさんが
その相手と距離を取るなりして
コントロールすればいいでしょう」
明らかに私からのラインを無視しているユーキは
またそのうちに私の職場へと配達に来るわね
あ、ちょうどワインもなくなりつつあるから、
また1ダース、職場へ配達させようかしらん?
その時、一体どんな反応をするのかしら?
こちらからのラインを明らかに無視してる方が
会った時、より気まずくなるだろうことも
計算できない彼は、きっと、今流行りの
こじらせ男子ってヤツね
こちらの反応や思惑など見ようともせずに
自分のちっぽけな想像の世界だけで
あれこれ見当違いな想いを巡らせては
独りであっぷあっぷしてる
うふふ、尤も、そんな彼も私からしてみれば
可愛いのだけどね
だから、今度配達でやって来た彼に
「あー、また、私のライン、無視してるでしょ?
上手く出来なかったこと、根に持ってるんでしょ?
こっちは全然気にしていないから、
うじうじと悩むの止めなさいよねw」
って、イジってやるわねw
そうやって、彼の重苦しい心を解いてやらないとね
でもまた彼と逢瀬したいかって訊かれれば、
もうごちそーさんって感じで、結構だけどw
あら、もうこんな時間
早く寝ないと、お肌に響いてしまうわ
この話は、ひとまずこれでおしまいね
あ、それはそうと、
トオルはいつ私と逢瀬出来るの?
え、これに懲りて、もう逆ナンはしないのか?ですって?
いーえ、私は懲りない女なので、これからもするわよ
そこにいいメンズがいる限り
そうそう、さっき、うちのマンションのエレベーターで
黒髪で、水嶋ヒロ似の、
めっちゃイケメンの住人と一緒になったの
そこで早速、逆ナンしようかと思ったけど
さすがに、はしたないかなって遠慮したのね
でも、やっぱ、忘れられそうにないの
だから、私の中でルールを作ったのよ
そのメンズと3回遭遇したら
3回目で口説いてやろうって
え、大丈夫なのか、めっちゃ、
生活圏のメンズになるけど、ですって?
そこなのよー、問題はねw
でも、私、懲りない女なので
かつては100%ナンパで成功したという、
トオル大先生、その秘訣を是非私にも伝授して
待ってるわ、またね
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