キデは、すっかりお湯にのぼせた
トオルを先に浴室から追い出すと
いつもトオルを含めたメンズとの逢瀬のたびに
持参している、pubic care 専用のフォームで
丁寧に洗った
ホテルに備え付けてある、否、市販の
ボディソープでは刺激が強すぎて
ピリピリ、ヒリヒリとしてしまうからだ
キデもやがて浴室から出ると
急にもどかしくなって
ざっと体をバスタオルで拭いた
アラフィフの、The昭和男のトオルは
Kide’s data にもあるように
浴室付近の床に豪快に滴を飛ばし
キデが気を利かせて
予め敷いてあったバスマットも
弾き飛ばしていた
それを風呂から上がった自分のために
位置を直しながら
きっと、トオルは自宅でもこんな感じね
縦のものを横にもしない
亭主関白なのでしょ、と思った
合コンで出会った女性とそのまま
20代初めに結婚したという、
トオルの奥方もきっと、
かつてはそういう豪快で
物ぐさなトオルに甲斐甲斐しく
尽くすことを、女の、妻としての、
喜びとしたのかも知れぬと
意地悪く考えたりした
私なら、こんな手間のかかる男はごめんだわ
一度トオルに
「もしも、オレたちが20代の
独身同士の頃に出会ったとしたら
どうなっていたと思う?」
という、実にしょーもない愚問を
突きつけられて
内心うんざりしながら
キデはこう答えた記憶がある
「お互いにどうとも思わず
お互いを選ばなかったことだけは確かね
だって、そうでしょ、お互いのニーズが
当時は異なっていたわけだから」
不倫カップルにありがちな愚問だわ
まさか、こんな愚問をトオルから
聞かされようとは
誰がどう言おうとも
私たちは必要な経験を経て
必要なタイミングで出逢ったのよ
それ以外のたらればなんて
意味がない、興味がない
でも、一方でそういう質問をしてくるトオルを
キデは可愛くも思っていた
それぐらい、私の存在を
意識してくれているということだから
バスルームから出てベッドルームに入ると
トオルは部屋のライトを少しだけ暗くして
既に布団の中に入っていた
裸体に巻いていたバスタオルを取ると
キデもそろそろと布団の中に入った
トオルはキデを抱き寄せると
またもや、あの甘やかなキスの嵐を繰り返した
どのメンズよりも長く、多くキデに
キスする男でありたいと言ったトオルは
確かに実際そうであったし
どのメンズよりもキスへの思い入れが
強いような気がした
メイクラブの最中で
何度もキデの顔をじっと見つめるので
「どうしてそんなに見るの?」って
キデが質問すると
「キデがキレイだから
こんなにキレイな人と
メイクラブしてるんだって
そう思いながら見てる」
と、トオルはそう答えたことがあった
ひとしきりキスをして満足したのか
トオルは今度はキデをぎゅっと抱きしめた
ほら、始まったわ、とキデは思った
この人はあまりに情感をこめて
私を抱きすぎる
かつてのキデの第5愛人、しょーたも言っていたように
トオルは愛情が深すぎる
良くも悪くも、情けが深すぎる男なのだ
それがトオルの最大の魅力で
そここそにキデも惹きつけられているのだが
同時にその深すぎる情けは、諸刃の剣で
キデにとっても大変、危険な要素を孕んでいた
その強すぎる想念がキデに
なみなみと注がれるからだ
そしてまたもやひとしきり力を込めて
キデを抱きしめた後で満足したら
今度は性欲に駆られてではなく
まるで仔犬が母犬の乳首を求めるかのように
キデの乳首を口に含むのだ
何かの充足と癒しを求めるかのように
一度キデが愛撫に注文したなら
トオルは緊張してそれに応じようとするので
キデも何だか気の毒になってしまって
もうそれ以来、何も言わなくなった
日頃はベッドの中でメンズに対して
強気のS気質を発揮して注文を出すキデだが
このトオルに対してだけは
キデは何も言わず
完全にトオルの好きなように
させていた
それからふと思いついたかのように
トオルはキデの胸から離れると言った
「ねぇ、オレのはコリコリ系じゃないよね?
中折れしまくりだし」
あ、また、その話(汗)
確かに、キデはブログでコリコリ系のPが好きだと書いた
それは紛れもない事実、コリコリ系が好きである
「トオルは標準的な大きさだし、紛れもなく
私好みのコリコリ系であることには間違いないわ
ただ、最近はずっと中折れ続きで
本領発揮していないだけで」
「でも、ディルド(女性用の男性性器張型)みたいに
カチカチじゃないよ」
そう言っている最中でも、
中折れしてる自分のPが気になるのか
トオルは自分で触っていた
「あのねー、私、これもブログで書いたよね?
道具は嫌いだって
あの、無機質のラバーの冷たい感じが嫌なの
カチカチだったら何でもいい
っていうのではないのよ
ふにゃにちんでも、
命の通った温かい感じがいいの」
「だけど…」
「もっと分かりやすく言えば、
私はアルデンテなPが好きなの
表面は温かくて柔らかく
でも固い芯が残っているような」
人というのは、こちらの意図を無視して
自分にとって都合のいい情報、
自分が信じたい箇所だけを強引に切り取って
それだけを妄信する
その前後に書かれてある文脈など
一切お構いなしで
もう、お手上げだとキデは思った
「アルデンテなP…」
そのままトオルは黙り込んでしまった
納得したのだろうか?
to be continued…
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