ゆーや、おつかれさん
さ、今夜も、愛人帝王学の
レクチャー始めるわよ
え、何、ゆーや、質問があります!ですって?
積極的な姿勢はとてもいいことよ、
いつでもゆーやの質問は
核心を突いて来るから、ちょっとドキドキするけど、
一体どんな質問かしら?
トオル兄さんの直接上のパイセン愛人だけあって
ツヨシ兄さんは、トオル兄さんを上回る
深刻なポンコツ愛人とお見受けしました
デリヘル嬢みたいな逢瀬の提案をされ
それを断ったために、ツヨシ兄さんから
逆ギレのLINEを貰った時点で、
「さっさと見切りをつけて、
心置きなく新しいメンズをなぜ
探そーとはしなかったのですか?」ですって?
そーねぇ、それはまさに
「腐りかけのオレンジ理論」によるかしら
ポカンとした顔をしなくても、
今からちゃーんと説明してあげるわよ
例えば、ここに腐りかけのオレンジがあったとするわよね
普通ならそこで捨ててしまう人もいるかもしれない
だけど、あたしはどちらかと言うと、
みみっちい性格ですからね、
既に腐っている部分だけを切り落とすと
まだ食べられそーなところは取って置くのよ
だって、そーでしょ?
実物は大きく違ったけど、
それでもサイトのプロフ写真で一番の好みのタイプが
まさにこのツヨシだったわけだし
ま、実物もそこそこ私の好みだったわけだし
その後、サイトで物色しても
このツヨシを越えるメンズは
なかなか見つけられずにいたわ
それにね、そもそもいるかどうか分かりやしない
たった1人のMr.パーフェクトの存在を信じて
せっかく見つけたそれなりの
好みのタイプのメンズを手放すのは
何だか勿体ないような気がしたのよ
手放すのはいつでも出来たしね
そーやって、ちょっとずつメンズの良い所取りをして
そーやって、ちょっとずつ自分の欲望を細分化して
複数の色んなメンズに私の欲望を叶えて貰おうと思いついたのよ
そしてちょうどいいタイミングで現れたのが、
ヒロシと東京出張だったわけよ
ヒロシがツヨシを差し置いて第2愛人と呼ばれるわけは
詳しくは、本編のその7で既に説明済みだから分かるわね?
そう、ヒロシとは男女の関係になるのに
10年かかっただけであって
知り合ったのも、男女の関係を持つようになったのも
ツヨシより早かったからよ
そして、私がヒロシを誘惑しようと思った動機も
詳しくは、本編のその6で既に説明済みだから分かるわよね?
10年前に初めて会った時、
互いに一目惚れをしていたからよ
お酒が大好きなヒロシは、
あたしの職場での飲み会で酔っ払ったりすると
あたしのことをからかいに来ることはあっても
素面の時の彼は、あたしのことを一瞬凝視したかと思えば、
後は決してあたしと目を合わさず、あたしの方を見ることもなく
まるではにかみ屋の多感な少年みたいで
実に私への想いが分かりやすかったわ
一方あたしは彼ほど露骨に態度には出さないものの、
一時あたしは彼のことを「悩ましの君」と呼んでいたぐらい
彼があたしの近くに来ただけで、
主にその彼の肉体労働で鍛え上げられた体に
ドギマギと怪しい気持ちにさせられたものだし
そんな気持ちを払拭するためにも
彼に対して好き避けをしているような感じだったわね
でももうこういう青臭い恋愛ごっこは終わりにして
あたしは何が何でもヒロシを誘惑して
メイクラブを遂げてやるって決めたのよ
そのためには、まず東京出張へ
ヒロシを駆り出さなくてはならなかった
あたしは一旦相手を誘惑するとスイッチが入ったら、
そこから急に怖いもの知らずになるの
迷いが一切なくなるというか、
まさにあの時の感覚ってば、私自身じゃなくなって、
何かに心身を乗っ取られて操られているような感じね
電話番号を知っていても
日頃はかけることをためらっていたヒロシに
あたしは迷うことなく電話をすると、
極めて落ち着いたビジネス口調で
「あたしも要員として同行するから
彼にも東京出張へ行って欲しい」と
ストレートにお願いしたの
するとヒロシも快諾してくれたわね
そうやってヒロシへの根回しを済ませた後で
上司である夫も出席していた会議にたしも参加して
平然と、出張要員にはヒロシが適当であると推薦したのよ
当時から、主にヒロシが私に好意を抱いているらしいと
勘ぐっていた夫は、
あたしのことをじろりと見たような気もしたけど
全然気にもしなかったわね
あたしは肉食どころか完全に狩人気質のところがあるのね
獲物を誘惑して落とすまでの過程が一番興奮して楽しいのよ
落としてしまうと途端につまらなくなってしまうというか
逆に男性から口説かれると引いてしまうタイプかな
あんたなんかお呼びじゃないんだから、
あたしに近寄らないでってね
あたしから追いかけて獲物を仕留めるのが一番好きなのよ
それから、ツヨシやトオルと言った、
ダメンズばかりに執着してしまうのも
あたしが愛情をあげたくて仕方ないタイプだからでしょうね
私は愛情クレクレ星人ではなかったみたいだわ
閑話休題
そうやって外堀を埋めてヒロシを東京へ連れ出したの
自分の経営する会社の都合で彼は遅れて合流したわけだけど
この後繰り広げられる私の企みなど露ほどにも知らぬ彼は
相変わらず照れながらあたしと
付かず離れずの距離を取っていたわね
いいえ、彼は知っていたわね
その当時から2年前にも
あたしは東京出張へヒロシを連れ出し
その当時から2年前は
関係者で会食がまだ許された時期だったから
それを済ませた後で
2人きりの2次会へとヒロシを
直接電話で誘い出したわけだし
その時にヒロシは自分に対する
あたしの気持ちを理解した筈よ
だけどその時はまだ
機は熟していなかったのでしょうね
彼にしては珍しく1次会の酒量だけで
したたかに酔っているような感じだったし
宿泊ホテルの直ぐ近くにあった
外資系の高級ホテルのバーで
こっそりと待ち合わせをしたのだけど
素面だったあたしに対して
酔っ払っていた彼に大人の男ならバーでは
バーボンのロックだわって
あたしが面白がって勝手にオーダーしちゃったのね
今にして思えばこれが
悪ノリし過ぎだったと反省しているわ
ヒロシはバーボンより
ウォッカが飲みたかったのにね
あたしはジンリッキーをちびちびと飲んでいたけど
ヒロシにとっても念願のあたしと
二人きりのシチュエーションに
すっかり彼は舞い上がっていたのもあったし
彼も好きなウォッカでちびちびと
やりたかったのでしょうね
ぐぃっとバーボンロックを
あおるようにして飲み干すと
ウォッカのロックをオーダーし直したの
日頃、酒豪で鳴らしている彼にしては珍しく
もちろん立て続けに強いお酒を早いペースで
飲んでしまったのが一番いけなかったのだけど
蓄積した日々の仕事の疲れとか
彼にしては慣れない東京の地での出張とか
思いがけないあたしからの誘いとか
色んな要素がごちゃごちゃと一気に一度に
ヒロシを襲ったということもあって
彼はウォッカを飲み始めた頃には
かなりの酩酊状態だったわ
日頃はぼそぼそとそんなに大きくない声で
ゆっくりと噛みしめるかのように話す
ヒロシだったけど
すっかり出来上がっていた彼は、
やたら大声であたしに話しかけて来たわね
元々地声の大きい方であるあたしも
そんなヒロシに合わせるかのよーに
自然とさらに大きくなっていたみたい
だって静かに飲んでいた客が、あたしたちの方に一瞥すると
何だか次々と立ち去っていく、そんな感じがしていたもの
あー、あたしたちってまさに
下品極まりない客だったわね
今思い出してみても、
恥ずかしさで消え入りたくなるわ
でもまだこの後に大きなトラブルが
あたしたちを待ち受けていたのよ
いつでも自分の欲望を果たそうと、
それに忠実に従った行動をするも、結果的にその都度、
空回りばかりしているあたしのことを
ゆーやはとても面白いと言うけれど、
まさにこのときもあたしの目論見とは大きくかけ離れて
トホホな大惨事を
招くことになってしまったのよ
おぉ、それについてはまた明日、お話しするわ
今日のレクチャーはここまでよ
しっかりと学んで、
素敵な愛人さんになってね♡
間違っても、トオルみたいな
ポンコツ愛人になってしまってはダメよ
それでは、またね〜
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