キデは知り合って直ぐに、
ゆーやの持ち前の感性と
それを表現する言葉のセンスに
虜になってしまっていた。
実際に肌合わせをする前から
このメンズはまごうことなき
愛人候補ねと決めた、
そんなゆーやとの出逢いの経緯を書いた
ブログ記事をここ最近は毎日上げている。
キデのもう一人のフォロワーでもあるトオルは
それを仕事の合間のタバコ休憩で読むのだ。
キデがこれまでにメンズとの逢瀬を通して
蓄積して来た、メンズの生態に関するデータ、
Kide’s dataによると、
メンズは自分よりも10歳以内年下の男に
嫉妬しがちで張り合おうとする
それが証拠に、ゆーやとの出逢いを書いた記事
「読者とメイクラブ♡」の前には
キデの年齢の半分の24歳の青年との逢瀬を描いた
「逆ナン」を上げていたのだが
トオルはそれを読んでも特に反応を示すことなく
平和に一読者として楽しんでいるようだった。
実際に23歳の娘がいるというトオルは
敢えて一読者に徹することで、
自分の実の娘と年齢が近い若造と逢瀬するキデを
受け入れようとしたのかも知れなかった。
確かにその頃は、トオルへラインをいくらか送っても
既読が付くだけで、これと言った返信はなかった。
しかし、「逆ナン」の連載を終えて
「読者とメイクラブ♡」の連載が始まるやいなや
トオルの反応もちょっとずつ変わって来た。
最初はキデのラインにスタンプを
辛うじて送るだけだったのが
少しずつ言葉で返事を寄越すようになってきたのだ。
毎回、ブログ記事の最後に
キデ&トオルの夫婦漫才のパートがあって
そこでトオルはキデからトオルのPの中折れ具合から
イカレポンチで時々素っ頓狂な振る舞いをしがちな
トオルの言動までをイジリ倒されるのだ。
それって、ちょっとした公開処刑のようだね、
という、ゆーやの指摘を受けてキデが
実際にトオルに訊いてみたことがあった。
それに対して、トオルは返事を寄越して来たのである。
ずっと既読スルーが続いていたことに慣れていたキデは
思いがけないトオルからの返事に驚いたのを覚えている。
「いじられるのは大丈夫だよー」
そして、ゆーやの言葉を借りれば、
その夫婦漫才の絶対的不可侵領域であった、
キデの相方としての役割をまさかのゆーやに
奪われてしまったことについては
「そうだね(笑)少し寂しいよ」
すっかり相方役を奪われてしまった
キデ&ゆーやの夫婦漫才で2人が
トオル座談会を開催してトオルについて
好き勝手にあれやこれやと話していたことに関しては
「読んだよ~!こわい(笑)」
そして、もっと驚くべきことに翌朝には
尤も、翌朝と言っても、経営幹部を務める彼は
いつでも重役出勤でお昼前後に起きるので
厳密には昼を過ぎていたのだが
「おはよう、いい天気だね♪」
と、自らラインまで寄越して来た始末だ。
この変化にさすがのキデも少し驚いてしまった。
しかし、このトオルの変化を予言していたのが
何を隠そう、ゆーやだったのだ。
「トオル兄さんと僕はとても似てる
トオル兄さんの考えた方、
手に取るように分かるよ
だって僕を第三者の視点で
見てるみたいやもん
トオル兄さんは、
実は生き別れた兄じゃなかろうかと
…そんな自分でも訳分からん
妄想したりしてるぐらいだよ笑」
と実際に言って来たぐらい、
ゆーやからしてみれば、
トオルの心の内、行動パターンが
読めてしまうのだと言う。
「僕に夫婦漫才の相方役奪われたから、
トオル兄さんから逆襲があるはずだ
何かしら、返事を寄越して来るよ
近日中に、キス魔の兄さんは、
オービスをもろともせず、高速飛ばして
馳せ参じて、キスの雨を降らせながら
ねーさんに『餅』をばら撒くだろうよ」
それを聞かされた当初は、
まさかそんなことあるのかしらって
半信半疑でいたキデだったのだが、
見事にゆーやの予言は的中した。
Kide’s dataに対抗して、ゆーやは
Youya’s data なるものを引き合いに出して言った。
「普段彼女との関係にある程度の安心感、
安定があると少し油断…
しかし、別れの匂わせやライバルの影を感じると
嫉妬深い男はそれを敏感に察知し、
自分が一番である事を
思い知らせてやろうと行動に移すものなんだよ」
それから間もなくだった。
トオルが執拗に何度もゆーやとの
メイクラブはどうだったのか?と
キデに訊いて来たのは。
それについてはブログ記事で近々上げるから待て、
ネタバレになってしまうから、
いくらトオルと言えども教えられないと
再三断ったにも拘わらず
そんなキデに業を煮やしたのか
トオルは思いついたかのように
突然の逢瀬を打診してきたのだ。
「キデとしたい~
明日って午前中とか時間ない?
2時間位しか逢えないし急だし
ムリだよね?」
それで二人は翌朝10時に逢う約束をしたのだ。
よくよく思い返してみれば、
いつでもトオルとの逢瀬の約束は、
こうして突然、彼の思いつきで決まる。
余程のことがない限り、
否、あったとしても、それを回避出来そうならば
キデはトオルとの約束を優先した。
基本的に出不精のキデは、
週末にメンズとの逢瀬に出かけるなど
余程事前から覚悟を決めて約束をしていない限りは
ありえないのだが。
はやる気持ちとは裏腹に、それをトオルに感づかれるは
癪なので、ラインでは素っ気なく同意する返事をしたが。
「いいわ、逢いましょう
明日ならまだ余裕あるから
でも、トオルって私が誰かとメイクラブをすると、
それがきっかけとなって、いつでも逢いに来るよね、突然 (笑)」
「(笑)」
「基本的には時間がたくさん取れる時に逢いたいんよね
でも、時々すごくキデとしたい!って
思う時が有るよ」
それをゆーやに告げると、
こう返事を寄越して来た。
「僕的にキデさんのブログ読んでて、
トオル兄さん、
キデさんを放置し過ぎじゃない!?って
他人事ながら心配してて、
危機感なさ過ぎに笑った
しかも、別の人とメイクラブの記事→悶々→
『そろそろ逢いに行くか』って、
本当にトオル兄さんは子供っぽいね笑
そんなトオル兄さんだから
キデさんも放って置けず…
気付いたらトオル兄さん、
愛人筆頭に昇りつめてた
過去のブログから、
トオル兄さんは随分熱心に
キデさんのことを口説いていたのが分かったし、
本当に手強い相手だと思ったよ笑」
to be continued…
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