「俺たち、互いに『運命の相手』だと思うんだ」
お湯を張りに行って浴室から戻って来ると、
ドカッとソファーに腰かけて、タツノスケ師範ってば
藪から棒にそー言ったのよ
あたしはと言えば、彼が消えた間にさっと洋服を脱いで
持参した、愛用のシルクサテンのネイビーの
スリップドレス(太ももぐらいまであるロングキャミソール)に
着替えていたの
そ、これはあたしの「逢瀬の三種の神器」の1つね
ほら、ラブホの備え付けの部屋着って萎えるほどダサいじゃない
ちなみに、あとの2つは、M専用ソープとマウスウォッシュね
その他の常備品として、相手のメンズが独身なら使用するコロンかな
さてと、あたしはその時、ベッドの縁で向かい合うよーにして座っていたの
「は?」
あたしはタツノスケ師範の思いがけない発言にきょとんとしてしまったわ
それからすぐさま態勢を立て直すと、
持ち前の好奇心がムクムクと頭をもたげてきたの
「ほう、それは面白そーな見解ね、なぜそー思うの?」
ホント、男って、好きよねー「運命」って言葉w
世間では女性が愛して止まないパワーワードのよーに思われがちだけど
何が何が、メンズだってなかなか「運命」ってワード、好物みたいよw
だって、あたし、サイトで知り合ったメンズ3名ぐらいから
「運命の相手だ!」なんて気安く言われたことあったもんねーw
今では、その「運命」も相手のメンズと共に
木端微塵に散ってしまってどこへやらって感じだけどね
ほうほう、このタツノスケ師範とやらは、
一体どんな大演説を打つのか聞かせてもらーか!
タツノスケ師範ってば、そんなあたしのリアクションに怯むことなく
すらすらとその根拠をいくつも列挙して言い始めたの
「まず第一に、俺たちは話をしていても楽しいし
考え方が似てる、どちらもとてもポジティブで明るい
しかも、キデさんは俺のどストライクのひとだし」
「あら、それはお褒め頂き、ありがと~
そーね、あたしもタツノスケ師範も、
明るく気持ちの切り替えが早い方だと思うわ」
「次に、俺たちは共に性欲が強い、これは大事」
「あら、あたしはタツノスケ師範的にも性欲が強い方なの?」
「そーだな、強いと思う。大抵の女性は2回もイカせると、
その後は『もういい』って断りがちだから
その点、キデさんは時間さえあれば3回とは言わず、もっと求めてきそう」
「うーん、そーまで断言されちゃうと、否定できないかも」
「次に、俺はバツイチのシングルだし、キデさんもほぼみなし独身の気楽さ
しかも、距離的にも俺たちは近いから、会いたいときに結構会える」
「そーね、そのとーりだわ!
それはそーと、独身なのだから、新たな再婚相手とか求めていないの?」
「それは要らない、恋人も要らない、会いたいときにセフレと会う、
それぐらいの気楽さが一番いい」
「確かに!おっしゃるとーりw」
「それに、俺たちは呼吸が合う」
あら、呼吸が合う、ですって?
そー言えば、あたしがタツノスケ師範と出会うよりはるか前に知り合い
彼のつれない態度にもめげずに未だに惚れてる、
東京愛人のマコトも確か全く同じことをあたしに言ったっけ…
マコトはその根拠を上手く説明してはくれなかったけど、
このはしこい、タツノスケ師範なら
マコトに代わって教えてくれそーだわ
だから、あたしは訊いてみたのよ
「呼吸が合うって、どーいう意味なの?」
「例えば、こちらが前戯を止めてそろそろ挿入したいかなと考える
そーしたら、同じタイミングで相手もそろそろ挿入されたいと思ってる
そんな感じで、ベッドの中での動作、
欲求のタイミングが何も言わなくても合ってることかな
一連の流れをせき止めることなく、一緒のペースで流れて行えると言うか」
「なるほど~」
いつ何を尋ねてみても、相変わらず説得力のある回答ね
「それから」
「あら、まだあるの?」
「うん、キデさんのMと俺のPの相性が異様に良すぎる!!」
「おほほ…それはもー異論なしね!w」
「だから、なかなかこんなに何もかも条件が合致する相手っていないと思うんだ
大抵は必ずどれかが欠けてて、ま、いっかって目をつむって付き合う
だからこそ、俺たちはまさに『運命の相手』だと思ってる」
ここまで実に淀むことなく説明した
タツノスケ師範にすっかり感心してしまい
それだけに何だか他人事のよーにも思えて、
特に何も考えずに調子を合わせて返事してたわ
「そーね、そー言われてしまうと、
確かにあたしたちは『運命の相手』かもね」
それから、彼は名刺入れから自分の名刺を取り出すと、
そのままあたしに渡したのよ
え?どーして?
あたしはそれを受け取りながら、またしても、きょとんとしてしまったわ
だって、あたしたちはまだ生入れとかしたことなかったのに?
そ、ゴム無しで挿入した女性には射精責任を取るつもりで
タツノスケ師範は名刺を渡すと言っていたから
しかも、今回で会うのがまだたった2回のあたしに
こんなに容易く自分の身分を明かしてしまってもいいの?
あたしは、彼の真意を測りかねて、そのまましばらくぼんやりと
渡された名刺に見入っていたのよ…
to be continued…
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