翌朝、怒りを一晩寝かせたところで
キデはなつみへの返事を打った
「おはようございます
返信、ありがとうございます
でも、1つだけ弁明させてください
ご主人さんは、独身だと
プロフィールには書いてありました
私もずっと独身の方だと思っていました
私もその点では、あなた様のご主人から
嘘をつかれていたことになります
それから、私の知らないところで
私の写真とやり取りも勝手に
知人に公開されていた
結果的に知らなかったとはいえ、
奥様であるあなた様を
傷付けてしまったことは
悪かったとは思いますが
私だって、あなた様のご主人から
独身だと騙され、さらにやり取りまでを
公開されたという、被害者です
ご主人は「サトシ」ではなく、
「フトシ」という名前でサイトで登録されており
名前はカンタと名乗っておりました
もちろん、ご主人は現在サイトを退会されておりますし
既婚者と分かった以上、
私も連絡を取るつもりはありません
そもそも、今回のことはどうやって
明らかになったのでしょうか
不愉快なことばかりお訊きして
申し訳ありませんが、
教えていただけないでしょうか?
それから仕事内容のものって、
仕事関係の資料ではなく、
私の仕事の姿ということですか?
私も大変傷ついております
よろしくお願い致します」
そこまで一気に入力し終えた後で、
思いついたことがあって、再び入力をした
「それからたびたびごめんなさい
どうして私の自宅の住所、職場の住所を
ご存じなのですか?
それも併せて教えて頂けないでしょうか?
よろしくお願いします」
キデは仕事上で懇意にしている弁護士が
ちょうど出会い系サイト被害に特化した
弁護士であったことを思い出し
彼に要件を敢えて伝えずに
アポイントメントだけを取った
どのみち、弁護士と会うのは、
1週間の東京出張が終わってからだ
今すぐ身動きは取れない
その間にも、カジモト夫妻は慌てて
第三者に公開した証拠を処分してしまうだろう
一応、こちらも念のためスクショは取ったものの
しかし、肝心のカジモトとのラインのやり取りを
既に消してしまっていた!
なぜなら、先のKidechan’smen 臨時会議にて
カジモト追放と決定してしまったので
その一環としてカジモトのラインを削除し
ブロックしたばかりだったのだ
慌ててブロック解除をし
法的措置の可能性を意識した証拠収集ということで
カジモトのラインを復活させて残してはあるのだが
しかも、この男、ラインでの登録名もまた違った
どれだけ源氏名を使い分けているのか
こいつはこういう浮気の常習犯に違いない
しかし、その割には対策が雑過ぎるのだ
そして、どんなになつみが否定しようとも、
依然としてハメ撮り疑惑は拭えずにいた
なぜなら、カジモトはそそくさとシャワーを一人で済ませると
一人だけ着て来た私服をまた着て、
いよいよ挿入の寸前という段階までトランクスさえも
頑なに脱がなかったからだ
それは、ハメ撮りで自分の醜い裸体が映り込むのを
避けたかったからではなかったか
でもホテルの部屋は薄暗かった
でも盗撮にはそんなことなど関係ないか
むしろ、薄暗い方が
よりリアリティーが増すというものなのかもしれぬ
百歩譲って、彼の内輪だけで楽しむのならまだしも
これを不特定多数の者に公開、販売となったなら
そしてそれを私の知人が見てしまったとしたら…
でも、どうやって私の自宅とか職場の住所を
知っていると言うの?
私はそういう可能性を考えて
いつでもメンズと逢瀬するときは
自分の身元が分かるID等は
一切所持しないのに?
私の後を付けていたとでもいうの?
それとも知らぬ間に私のスマホを覗き込んで
情報収集してたというの、カジモトは?
ぐるぐると色んな可能性が頭の中で渦巻き
日頃は性に対して何でもござれの筈の、
キデは震えおののいた
メール画面を開きっぱなしにしていたら
それから程なくして、キデのメールに既読がついた
なつみも同じように眠れぬ朝を迎えてしまったのだろうか
早速キデは、なつみからの返信に目を通した
to be continued…
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