「今回はどのようなご相談でお越しになったのですか?」
ここの代表弁護士である、Y弁護士が約束の時間を少し遅れて、
キデが待機する部屋へ入って来た
「お久しぶりです。先日は大変お世話になりました」
キデは椅子から軽く腰を浮かすと頭を下げた
このY弁護士は、キデの職場の顧問弁護士でもあり
キデもこれまでにも数件、個人的な案件でお世話になっていた
Y弁護士はキデより恐らく5歳ぐらい年下で
ボルダリングが趣味だというだけあって
もうかれこれ10年近い付き合いなのであるが
この間一切体形の崩れがなく長身で
いつでもクールな顔して3ピースを隙なく着こなしていた
男性の体形の良し悪しを容赦なく晒し出してしまう
3ピースをここまで粋に着こなすメンズに
キデは未だかつてお目にかかったことがない
Y弁護士は東京生まれの東京育ちで
抑揚が余りなく、淡々とした口調は
関西弁寄りの早口で愛嬌のある口調に慣れている
キデの地域の住人からしてみれば
シュッとし過ぎた彼の容貌とも相まって
しばしば冷たくとっつきにくい人だと
敬遠されがちであった
しかし、これまで極めてプライベートな案件を
幾つも相談してきたキデからしみれば
口に出すのもはばかられるような内容でも
顔色1つも変えずに始終クールに聞き、さばく彼に
絶大なる信頼を寄せていたのであった
「今回も、出会い系サイトの件で相談に参りました」
「え、またですか?」
さすがにポーカーフェイスのY弁護士も思わず苦笑していた
なぜなら前回、出会い系サイトの被害で相談に訪れたのが
去年の11月で、それが完全に解決したのが去年の12月末だったからだ
それからまだ2か月弱しか経っていなかった
尤も、この件については機会があれば
いつかキデがこのブログで書くかも知れぬ
それまではここでは敢えて触れないでおくことにするが
閑話休題
Y弁護士から少し遅れて、イソ弁の若造弁護士が入って来た
支店事務所を作ろうとして、新しい弁護士を数名雇ったと聞いていた
これからかなり性的な話をしなくてはならなくなるのに
どこの馬の骨とも分からぬ若造が私の話を
きっと興味本位で聞くのだろうな
人知れずキデは舌打ちをした
「今回は詐欺ではないです、ハメ撮り疑惑についてです」
言い淀んでいては時間内に相談が出来ぬ
攻めて行け、どんどんと怯むことなく攻めの調子でぶちまけるのだ
緊張でキデは体が熱くなり、顔も上気して
自分の脇の下にじっとりと汗がにじむのを感じたが
そんなことなどお構いなく進めた
キデの発言に一瞬、彼らは驚いたような顔をしたように思ったが
Y弁護士はいつものポーカーフェイスに戻っていたし
イソ弁の若造も、気まずいのかそれとも余裕がないのか
絶えずうつむいてタブレットに盛んに何かを記録していた
勢いを得たキデは、カジモトとの情事の話をし始めた
to be continued…
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