おつかれさん
え、昨夜は、キデらしくないぐらいに
酷く動揺して、いつもの、アレ、
トオルはあたしといつ逢瀬できるの?って
訊いてもらえなかったから、
かなり心配してるぞ、大丈夫か?ですって?
あはは
人は未知なる存在と遭遇すると
恐れおののき、声を上げてしまうものなのよ
自衛本能の一環でね
尤も、目の前にモンチッチがいたから、
それは全て、あたしの心の中だけで
怒涛のように行われただけだったけどね
そうそう、どーして、モンチッチという
あだ名をつけたのかって訊いたわよね?
もー、これでお分かりでしょ?
全身に紋々が入っているメンズだったから
紋々チッチ♪ からーの、
紋チッチとなったのよ
別に猿に似てるとかそんなのじゃなかったの
モンチッチファンの皆さん、ごめんなさい
さて、気を取り直して、話の続きをするわね
一通りの動揺が収まった後、
今度は急に怒りが沸々と込み上げて来て
「全身紋々だと、やり取りの初めで言えよ!
って、言うか、プロフに書いとけ!!!
ホテルに入室してから言うな、この野郎!!!
おまえ、確信犯だったな、
騙しやがって、この野郎!!!」
って、コホン、あたしのガラにもなく、思いつく限りの
罵詈雑言を心の中で
吐きまくっておりましたの
でも、実際はモンチッチの前では
動揺と恐怖を隠すかのよーに、
ニヘニヘと笑っていただけだったけど
だって、そーじゃない?
この後、媚薬とか何とかこじつけて
シャブでも打たれたらどーしよ
どー逃げ出すか
そーなったら、まだ意識がしっかりしているうちに
警察に電話だとか
この状況からいかにサバイバルするかだけを
ぐーるぐーると考えていたわけだから
同時にどこか観念もしちゃって、あたし、
「…別にいいのじゃない?」って
平然と言いきっちゃったのよ
あー、あたしのバカ、
言ってることと思ってることとが
全然違うじゃない
って、あれだけ動揺してたら、ムリもないか
ってことにしておきましょ
そーいうあたしの、一人忙しかった心の機微も
知る由もないモンチッチは
あたしの言葉に勇気づけられたのか
そこで初めておもむろに服を脱ぎ始めたの
いつもなら、メンズのトランクスの
テントの張り具合をさっとチェックするのだけど
今回はまるで逆ストリップショーにでも来たかのよーに
モンチッチが洋服を一枚一枚はぎ取るさまを
もー、釘付けになって見守っていたわね
紋々入れてる男って、
なぜかふんどしとセットっていうイメージがあったけど
さすがにモンチッチはフツーのボクサーパンツだったわw
まず視界に飛び込んできたのは
胸から腹まで大きく描かれた、大黒天ね
モンチッチは個人事業主だから、
差し詰め、商売繫盛祈願かしらん?
両肩には、鯉のぼりのうろこのよーな柄が
一面に描かれていて
時々そこに薔薇の花が混じり込んでいるという、
藍色単色の和彫りの入れ墨だったわね
あんまり露骨にまじまじと見るのもアレかなと
最初は、あたしも変に遠慮してしまったけどね
そんなうろこみたいな柄が
色もしっかりと入れられた状態で
両太ももから足首に至るまで
んまー、びっしりと敷き詰められて彫られていたのよ
そーね、紋々のラクダの股引(ももひき)バージョンみたいな感じ?
あ、今の若い人は、分からないか
まー、言わば、スパッツのよーなものだと思ってくれていーわ
そーそ、両腕にも手首までびっしりと同じよーにね
こちらも、紋々のロンTって感じだったわ
そんでもって、背中には
弁天小僧が大きく描かれていたわけ
そんでもって、お尻から後ろ太もも、ふくらはぎにも
びっしりとうろこのような、色を入れられた文様が
敷き詰められていたわ
はー、こりゃ、本格的ですなぁと
自分の置かれた状況も忘れて
ついつい見入ってしまったわよ
やっぱり、好奇心には勝てないからなぁ
だって、この機会を逃したら
たぶん、もう2度とお目に掛かれることもなかろー
(否、今後もそんな機会があったら、それはそれで怖いのだけど)
だから、美術館で絵画でも見るかのよーに
遠慮もなく見入ってしまったわけ
あら、もーこんな時間
早く寝ないと、お肌に響いてしまうわ
この話の続きは、また明日ね
あ、それはそーと、
トオルはあたしといつ逢瀬できるの?
「オイ、ワレ、何、もじもじとしとんのや?
はよ、言いや!
わてを誰やと思うとんのや?
わてらの惚れた腫れたは、タマの取り合いやで
トオルはんも、わてに惚れとんだったら
腹くくって、もの言いや!」
…なーんてね、気分はもー、極妻ね、うふふw
え、その割には堂に入って
ヘンな凄みがあったぞ、ですって?
タマタマも震えて縮こまったぞ、ですって?
もー、やめてよ、キデは正真正銘、
カタギの人妻です
とにかく、真っ当な返事を待ってるわ、またね
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