…なぜなの?
どうして?今更、雨に欲情なんかしたりしてしまうの?
EDの夫の拙い愛撫しか知らなかった頃ならまだしも
愛人だってセフレだってそれなりに何人かいるのに
…なぜなの?
そんなにたくさん相手がいたって
本当にこちらが欲情して求めているときに
誰一人ともメイクラブにありつけやしないのは
愛人もセフレも全然いないことと同じだから?
そうね、毎日したい私とは裏腹に
現実は月にわずかしか実現されていないの
一体、何人セフレを作れば解消されるというの?
雨の降る少し前、湿った風が吹いて、
思わせぶりなペトリコールが一足先に匂い立つ頃
体にのしかかる低気圧が静かに私を狂わせ始める
これってば、気象病における立派な症候群の1つかしらん
低気圧による、性欲の亢進ってね
それとも私ってば、まごうことなきニンフォマニアなの?
分からない、認めたくない、知りたくない
そもそも、一体何が「正常」で何が「異常」か
そうね、私は低気圧に強姦されているのかも知れない
私を羽交い絞めにして低気圧は
不快なその息を私の敏感なうなじやつむじに吹きかける
その間もべたべたとした低気圧のいやらしい指は
ショーツにくるまれた筈の
小陰唇をまさぐってそそのかす
低気圧の愛撫に充血して応える小陰唇は
ぞわぞわと誰か男のPを求めて
イソギンチャクが無数の触手を動かすように
熱気を吐きながら蠢きだす
あぁ、まさにこのことを言っているのよ
風がふわっと私のスカートをかすめただけで
私を酷く淫らな気持ちにさせてしまうというのは
何も隠喩めかして言っているわけじゃないの
本当にこうして欲情してしまうのよ
あり得ない筈の風の愛撫が柔らかな筒となって
膣の入り口へと入り、そのまま昇って行き
じんじんと熱くなって耐えきれなくなった私のMは
誰でもいいから男の固いPを咥えたくなって
ひくひくと震えだす
でもそんな時に限って誰も掴まりやしないの
いつだって私は独りきりね
孤独も飢えも決して癒せやしないの
どんなに女の細い指で慰めたって
ますます飢えは酷くなる一方で
全然満たされやしないの
空しく蜜だけが溢れ出す
性欲地獄ね
結局私はこうして書いて晴らすしかない
果てはあるのかしら?
男性陣は年齢と共に解放されると言うけれど
複雑怪奇な女体における
性欲の終焉がいつだなんて誰も分かりやしない
あぁ、本当に私は苦しいのです
いろいろと餌(え)をばらまく
私からのKakaoに唯一素早く返事を寄越したのは
「ED予備軍の男」として私が忌み嫌うメンズで
彼は膣の中で射精することを知らない
いつでも誰かの手のひらが膣代わり
だけど、うちの今の真正EDの夫よりかはまだましか
若さゆえに中折れ知らずな分
その間に私が貪欲に何度も果ててしまえばいいのか
おぉ、それにしても何て皮肉な話
セフレトライアルで不合格のそのメンズに
こうしてまたやんごとなき事情から
不本意ながら再び逢瀬せざるを得ないだなんて
彼の指定した時刻まで到底待てそうにないと
そわそわしながら化粧を顔に載せてゆく
まだ雨は降りそうにない
低気圧が私の体で大暴れしてる
早く雨粒が落ちてきて
こんな淫らで苦しい気持ちを一掃してくれたらいいのに
いつだって雨の降る少し前がこうしてしんどい
雨さえ降ってしまえば何もかも洗い流してくれる
でも、まだ雨は降りそうにない
空梅雨なのかずっとこのまま降りそうにない
そして今日も低気圧が私を静かに狂わせる…
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