メンズXことカイから
初めてメールを貰ったのは
まだゴールデンウィークの最中だった
最近では気が向いたときにしか
サイトWをチェックしないキデは
カイからのメールに気付いたのは
連休も明けた月曜の夜のことだった
その間に、カイは2通もメールを
キデに寄越していた
「はじめまして！
キデさんのプロフィール見て
気になったのでメールしました。
とても常識的な印象をもちました（^^）
こちらも既婚ですが仲良くしてもらえる
人を探してます。
良かったらメールしませんか？
カウンセラーしてます。
お返事もらえると嬉しいです。」
「こんばんは！
キデさんとメールしたかったんですが
だめでした？
気になってます（：∀：）
もう、いい人見つかってしまいました？
まだなら、ぜひともやり取りしたいです。
お返事もらえると嬉しいです。」
キデはそこでまず、カイのプロフを見た
プロフでキデの求めるメンズは
20代後半～40代半ばと設定しているからだ
それから、意外だと思われるかも知れないが
キデにはもう一つチェックする項目があった
それはメンズの身長である
キデ自身は身長が163㎝あって
日常的に６㎝程度のヒールのある靴を履くので
並んで歩いた時にそんなキデより高身長か
せめて同じぐらいの高さであって欲しかったのだ
キデがサイトを利用するようになって
初めて付き合った男が、Q男であったが
彼はプロフで自分の身長を
160～165㎝であると申告していたのだが
実際は158㎝しかなく
キデはいつも彼と並んで歩くたびに
そんな彼に合わせようと無意識に
身をかがめて歩いていたので
いつでも彼と会った後は首の付け根や
背中が痛かった
もう二度とそんな卑屈な思いはしたくなかったし
理由も一切告げずにある日突然キデからの
LINEをブロックしてサイトも退会してしまった
Q男が登録名を変えて、
このサイトに出戻っているかも知れぬ
キデも登録名を何度か変えていたし
そんな2人が皮肉にも再会することだけは
避けたかったので、メールやプロフで
余程、キデの注意を引くメンズでないと
キデは最初の時点で
165㎝以下のメンズは除外していた
Kide’s data によると、退会しても
そこにスケベ心がある限り、
メンズは鮭が自分の生まれ故郷の川に
戻ってくるかのごとく
かつて自分の登録していたサイトに
出戻ってくるものなのである
そこでカイのプロフをキデは見た
年齢は40代半ばとあり、
身長は170～174㎝とあった
それ以外にもカイはプロフで趣味など
色々と丁寧に書いてあったが
キデ自身はその書かれた項目1つ1つを
丁寧に読んだわけではなく
全体的にザッと見て、
自己アピール能力が高いかどうかを
チェックしただけであった
プロフを丁寧に作り込むメンズは
それだけコミュニケーション能力も高い筈と
キデは踏んでいたからだ
そういう判断をサッと短時間で行うと
キデは２件もメールを寄越してくれた
このカイという男に礼儀として
返事を返した
でも、正直、キデがターゲットとしている
30代の平成メンズでもなかったので
何分、気持ちは冷めていたのだが
「こんばんは
何度もメール、ありがとう
どうして、私のことをそこまで
気にしてくださるのですか？」
それから程なくしてカイから返事が来たのだが
キデがそれに気付いたのは翌日の昼だった
「お返事ありがとうございます。
嬉しいです（^^）
キデさんにこだわるのは、
お互い既婚だけど仲良くしてもらえる人を
探しているし、誠実そうだし、大卒だから
話の次元も合うかなと思ったので。
まだいい人見つかってませんか？
結婚してから彼氏がいたことはありますか？
やり取り続けたいです。」
キデはカイの返事を読んで、
初めて「お！」と興味を持った
「大卒だから話の次元も合うかな」ですって？
なかなか面白い視点からのアプローチね
キデはサイトを利用し始めた頃は
プロフでの学歴を敢えて「高卒」に
していたことがあった
なぜなら、ちょうどキデの世代辺りまでが
キデの感覚として大卒の割合が少なく
大卒のキデに対して、そうでない者からの
軽いやっかみのような反応を
ぶつけられることが時々あったからだ
キデ自身は、吹けば飛ぶような、
地元民しかおおよそ知らぬ
田舎の大学を出ただけなのにと
思っているのだが
実際、第２愛人でキデと同い年のヒロシは
最終学歴が定時制高校中退だけあって
二言目にはキデのことを
インテリ呼ばわりしたし
元・第３愛人だった、
やはり同い年のトオルに至っては
「俺は高校時代、大学進学コースにいて
そのクラスの中でもトップの成績を
納めていたんだ。だけど、経済的事情から
大学進学を断念せざるを得なかったんだ」
と言って、その無念さを晴らすがごとく
2人の娘をしっかりと大学進学させていた
残酷過ぎる学生ローンの問題もあるものの、
それでもあたかも高校の延長であるかのように
結構な割合で大学進学者が増えたのは
ちょうどキデから下の世代からだと思っている
そういう背景も踏まえて、当初キデは自分の
学歴を敢えて「高卒」と登録していたのだ
ビギナーズラックというのもあっただろう
キデはサイトデビューしてからしばらくは
地元の県からだけではなく近県のメンズからも
実におびただしいアプローチをもらった
その分、卑猥で無礼なメールも多かった
それに辟易してしまって、
ある日思い立ち、
学歴を「大卒」に変更したところ
その日を境にぱたりとメンズからのアプローチが
来なくなってしまった
激減してしまったのである
それでも無言の足跡、特に50代から上の世代のは、
相変わらず多くてうんざりしているのだが
ふーん、なるほど～
と思い、キデは学歴を大卒のままにしてあった
そこに敢えて食いついてくるとは、
一体どんなメンズなのだろう？と
初めてキデは興味を持ったのである
to be continued…
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