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情が深すぎる男~その7~(第3愛人特集)

キデはトオルと一緒にいると

 

しばしば彼の母親になったかのような感覚に襲われる

 

それは2回目の逢瀬のときに

 

まだ出逢って間もないキデにトオルが

 

こんな話を今まで誰にも、

 

家族にでさえ話したことはないのだけど

 

と前置きをした上で

 

自分の複雑な生い立ちを打ち明けて

 

静かに涙さえも流してしまった

 

ということがあってからか

 

これまでに気性の激しいキデが、

 

徹底して追い込んで

 

泣かしてきたメンズは数名いるものの

 

そう、文字通り、彼らはキデに

 

ぐうの音も出ないぐらいに

 

追い込まれて涙を流したのだが

 

それ以外で、こんなにも静かに涙を流す男を

 

見たことがなかった

 

でも不思議とキデは動揺することなく

 

穏やかな気持ちでそっと指先でトオルの涙を

 

拭ってやった

 

むしろ、トオルの方が涙を拭われて

 

ハッと我に返ったのか

 

これまでオレは強がって

 

恰好の良い男であろうと

 

決してこんな弱みなど誰に対しても

 

見せたことはなかったのに

 

…どうして、こんなことに?

 

と、つぶやいたぐらいだ

 

キデにとってもこの時のことは

 

不思議な体験で

 

後日、キデの第1愛人であり、

 

彼女のメンターでもある、

 

通称、教祖様にこの時のことを話すと

 

彼はいとも簡単にこう言った

 

それは彼の複雑な幼少期と

 

キデさんの、やはり複雑な幼少期の体験とが

 

同調し合った結果でしょう

 

彼は直接キデさんの幼少期を知らなかったとしても

 

波長が合ってしまったということです

 

それに、キデさんは気付きましたよね

 

自分は大の子供嫌いだから

 

自分には母性本能などないって

 

言い続けて来ましたが

 

実は自分を求めて来る相手には

 

自分を犠牲にしてまでも

 

自分を与えてしまうという

 

そんな豊かな母性愛があったということに

 

たぶん、彼は無意識にそれを感じ取ったのでしょう

 

確かに、その時以来、トオルはキデに

 

無邪気に無防備に甘えてくるようになった

 

トオルは実際には1日だけキデより年上なのだが

 

でも、キデからしてみれば

 

いつでもトオルは自分にとって

 

弟か息子を連想させて、目の離せない

 

一番気になる愛人なのであった

 

to be continued…

 

 

 

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