2人で湯船に浸かった時
ちょうどキデはトオルの前で
すっぽりと収まるように背中を向けて座った
トオルはキデのおっぱいを背後から触れて来た
そうかと思えばもぞもぞと
何かを確かめるかのように
トオルは自分の下半身をまさぐった
「…ねぇ、キデ、こうしてお風呂一緒に入ってる段階で
既に勃起していなかったらダメなんだよね?」
「え?」
絶妙な湯加減と、愛おしい男からの愛撫とで
少しとろんとしていたキデは聞き返した
確かにそう言われてみれば、
いつもなら背中に感じる勃起したPを
感じないでいた
「あ、あれねぇ…」
そうね、確かにそれについてもブログで書いたわ
だけど…あの過去記事を書いたときは
トオルではなくて、過去に出会った最悪な男のことを
思い出して書いたわけだし
最悪な男の最悪だった一場面を
切り取って書いたわけだから
でも、こんなことを言えば、
さらに別の嫉妬でトオルを揺さぶりそうな気がして
キデはそこから先を言い淀んでいた
あぁ、面倒臭い!
「…だから、私のブログは読まないでって言ったでしょ?」
このトオルは私のブログを熟読し過ぎている
「今度、ブログで書こうと思っているのだけど、
私がセフレと寝るときと愛人とメイクラブをするときとは
全然その内容も意味合いも違うのよ
今は主にセフレとの情事のことしか書いていないから
それをそのまま自分に置き換えて鵜呑みにしないで欲しいの
だって、トオルは私にとって一番好きで大事な愛人だから」
「…そうだけど、それは知ってるけど、
ねぇ、キデは他のメンズともこうして一緒にお風呂に入って
こうしてイチャイチャしながら長くお話したりするの?」
何も分かっていないわねと思いながらも、キデは答えた
「イチャイチャするために一緒にお風呂に入るのではなくて
時間節約のためよ
一応、私は自分に門限を設けてあるから、
それまでの限られた時間内で情事を済ませてしまうための
一緒に入っても特に会話なんてしやしないわ
だって共通の話題なんて何もないもの、興味もないし」
分かりきったことを敢えて訊くのは、
自分こそがキデにとっての特別な愛人であることを
キデの口から言わせて安心したかったからだろうか
いいわ、それで納得して安心するのなら
何度でも答えてあげましょう、とキデは思った
「…ヒロシさんとも、こうして一緒にお風呂に入って
おしゃべりしたりする?」
「え、今度はヒロシの話?」
今度はそう来るかと、人知れずキデは苦笑した
ヒロシはキデの4人、もとい、今では3人になってしまった
愛人の一人で
キデと出逢ったのがトオルより早いということで
トオルからしてみれば先輩愛人となるのだ
尤も、キデ、ヒロシ、トオルの3人は同い年なのだが
「そうねぇ、ヒロシは一人でさっさと
シャワーを済ませたいタイプだから
未だかつて一緒にお風呂に入ったことはないわね
それにそもそもそんなにイチャイチャもしないかな
確かにおしゃべりは良くするけど
何て言うのかな、ヒロシと私は
愛人って言うより、同志って感じなのかも
たまたま気が向いたらメイクラブをするような
そうね、教祖様とは絶対にメイクラブなんて
しやしないけど、
彼も私にとっては同志って感じね
だから、私にとって一番の愛人は
トオルってことになるのよ
一番情欲を感じる相手ね」
「えー、愛人より、同志って呼ばれた方が
何か格好いいなぁ
オレもキデの同志になりたい!」
うーん、そー来るか…汗
人知れず、キデはため息をついた
どんなに言葉を尽くしたところで
嫉妬に囚われている男を
なだめる言葉などありはしないのだ
セフレと愛人とのメイクラブの違いは
セフレとの場合は愛撫の工程がやたら多いのに対し
愛人との場合は愛撫の工程が激減し
それを補うかのようにやたらおしゃべりが
多くなってしまうことだ
ほら、もう既にトオルの手は私のおっぱいを
ほったらかしにして
嫉妬でざわざわしてる心をなだめるかのように
癒しを求めて
私の体で一番甘さの残る、腹を撫でてる
どちらかがのぼせてしまうまで、
それは大抵トオルなのだが
あるいはお湯が冷めるまで
いつまでもおしゃべりが尽きない2人は
このあとの、お楽しみのメイクラブのことなど
すっかり忘れてしまってる
いつもは性欲モンスターを自認するキデも
ついついおしゃべりに夢中になって
このまま湯舟に浸かって
いつまでもトオルとのおしゃべりに
興じていたいと思うのだった
to be continued…
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