トオルから、「土曜の夕方に逢瀬しないか？」と
誘いのラインが入ったのは、水曜の夜中近くだった
「逢瀬しないか？」ですって
思いがけない、トオルからのお誘いが嬉しいのと
おおよそトオルらしくない誘いの文句がおかしく
キデはクスリと笑った
しかもその文句は、キデが毎回トオルへのラインでの
お決まりの締めの文句
「トオルはいつ私と逢瀬出来るの？」
に引っ掛けたものであったからだ
本当に感化されやすい人ねぇ…
キデは一人微笑みながら思った
20代のセフレのケースケと明日
久々に逢瀬するとラインでトオルに伝えたら
「いーな、いーな、キデばっかり
たくさんメイクラブ出来て
オレもキデとメイクラブをしたい♡」
と直ぐに返事が返って来たのが
月曜の夜だった
その時は、トオルのいつもの冷やかしだと
さほど気にも留めていなかったのだが
「おはよう
今日もいい天気だね
早くキデに逢いたいよ」と
火曜の朝、珍しくトオルの方から先にラインが来て
トオルは今夜の私とセフレとの逢瀬を
意識しているんだわ、とキデは思った
ケースケとの情事の余韻でずっと気怠く
火曜の夜はキデはトオルへラインを出さなかった
きっと、トオルはキデからの情事の報告を
心待ちにしていることは分かっていたのだけど
実際、それを物語るかのように
水曜の夜に、しびれをきらしたかのように
トオルから
「お疲れさま
雨だね
もう春も近そう
早くキデに逢いたいよ」
と、ラインが来た
古株のセフレのしょーたとは
ここのところずっと疎遠になっていたのだが
急に思いついたかのように木曜の逢瀬を
打診してきたので
虫が良すぎると、咄嗟に勢いで関係解消まで
こちらから申し出たのが
まさにトオルからラインを貰う少し前で
そんなこんなで面倒臭くなって
ずっとトオルへラインを出さずにいたのだが
気が変わって、キデはトオルにラインを送った
「おつかれさま
さきほど、しょーたと関係を解消したばかり
なーんか、しょーたとのやり取りに疲れちゃったの
これでセフレがケースケ1人だけになっちゃった
そんなケースケだって月１ぐらいしか会えないし
やっぱり、あともう一人ぐらい、セフレが欲しいわね
それから、ケースケとのことは、
いずれブログで書くから、それを待って」
待ち構えていたかのように、程なくして
トオルからラインが来た
「おっ、へこたれてないね、さすが、キデ
こちらは、仕事が過去にないぐらいに激務
日中は食事も忘れるぐらい
仕事の合間のタバコ時間に
キデ元気かなぁとか、昨日は20代のメンズと
どうだったのかなぁと考えたりしながら
仕事をしてたよ
それはそうと、土曜の夕方に逢瀬しない？」
食事を忘れるぐらいの激務の最中に
わざわざ数時間、時間を工面してまで
私に逢いに来ようとするとは
それはきっと、ケースケを強く意識し過ぎているせいね
それが証拠に、トオルはいつでも
キデの情事の相手のセフレ達を決して
名前では呼ばずに、十把一絡げで「メンズ」と呼ぶ
そして、これまでも、しょーたを意識したりとか
キモメン・カジモトを意識したりとか
そういうきっかけで突然思い立って逢いに来る
もはや嫉妬する段階は過ぎ去ったとは言うものの
他のメンズの存在が
トオルの逢瀬への意欲の起爆剤に
なっている事実は否定できないわねと
キデは静かに思いながら、返事を送った
「いいわよ、逢瀬出来るわ
でも、トオルは激務の最中でしょ
期待せずに待っているわ」
to be continued…
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