申し分のない、女体と女心を知り尽くした、完璧なセフレ、
それがタツノスケ師範だったのだけど
確かに最初はそんな彼に居心地の良さを感じていた筈だったのだけど
そこは、ほら、何せ偏屈でエキセントリックな女である、あたしのこと
段々と違和感を感じて、次第には彼に対して
言い様のない苛立ちさえ感じるよーになってしまったの
それどころか、自分でも全く不合理だと思うのだけど
彼がこれまでの、あたしの見ず知らぬ過去のセフレたちと
さも楽しそーに逢瀬をするシーンが勝手に際限なく再現されては
何だか嫉妬めいたざわめく心に為す術もないでいたわ
「あれ、これはあたしらしくない、あたしは自分の歴代セフレ、
愛人らの過去どころか、彼らの同時進行の他の相手にさえ、
これまで一度たりとも嫉妬したことがないのに、
これは一体どー言うことなの?!」
って、かなりうろたえてしまう始末
でも、そんな相手の過去の女たちがみょーに気になって仕方ないときは
相手との関係に何かしらの不満を抱えているサインだったりする
「あたしは彼との関係を完全には楽しめていないのに、
あんたたちは彼との関係を楽しめたとでも言うの?!
その違いは一体何なのさ?教えてよ!」
だから、男女関係における処世術として、
敢えて相手の過去の男女関係について訊かないというのがあるぐらいだけど
いかんせん、あたしは当時既に
「巨根さん、いらっしゃ~い!」の連載を始めていたわけだし
そーなると、望むと望まざるに拘わらず、
彼の過去の女性関係について根掘り葉掘り取材せざるを得ず、
そーやって、知れば知るほどあたしは
ますます不可解なもやもやを抱えるよーになっていたわ
そんなあたしの気持ちなど露ほども知らない
タツノスケ師範は、相変わらず
あたしのことを単なるセフレ以上に想ってると言わんばかりの
「匂わせ」のKakaoを送り付けて来たりなんかしてたのよ
あたしは書き物狂いであるくせに、他人とメールやLINEはもちろん、
Kakaoとのやり取りをするのがとても億劫で極力避けたいタイプ
既にそんなあたしの性質を見透かした彼は、
だからこそめげずにわざわざ日課として、
彼が寝起きの午前6時台、正午、夕方4時頃、それから夜間と
あたしに負担だと思われぬよう、
控え目に1通ずつご機嫌伺いのKakaoを送ってきたりしたわね
あたしがそれに返事をすると、素早く返事が返ってくるわけで
あたしはそんなタツノスケ師範に対して初めは、
「さっすが、女たらしのマメ男くん!
…でも、ちょっと寂しがり屋でもあるのかな、
こんなに毎日、面倒臭がらずにKakaoを送って来るだなんて」
って、程度にしか思っていなかったわ
だけど!
あたしが彼のKakaoに返事をすると、
彼はすかさず何かしらの返事を寄越してくる
これは後で知ったことだけど、
彼はあたしからの返信通知を設定しているらしく
あたしから返事が来たものなら、
車を運転中だろーともはたまたバイクで移動中だろーとも
信号待ちのたびに、細切れの短文でもいいから
何かしらの返事を連発して寄越して来たりしたわけで
あたしもそれに付き合って、気が付けば、
いつしかタツノスケ師範とやり取りのラリーをしてばっかりだったわ
尤も、「逢瀬の日程調整以外ではやり取りをしたくない!」と
ハッキリ言い切る、そんなドライなメンズ以外、
大抵のメンズとは関係が始まった
約2週間ぐらいは、いわゆる「蜜月期間」で
彼らも結構マメにあたしとやり取りを楽しむけどね
だけど!
それにしても、このタツノスケ師範ってば、
あたしに送り付けるメッセージの量、熱量、その頻度が
そんな彼らと比較しても明らかに段違いだったわ
会えない時はもちろん、逢瀬の後でも
そんなにマメにやり取りをしていると
彼の情にほだされて、
いつしか彼のことを憎からず思うよーになってくるものじゃない?
単なるセフレよりも、もっと踏み込んで気になってくると言うか
おまけにタツノスケ師範ってば、
そんなあたしを更にそそのかすかのよーに
さも、女が喜びそーな、甘ったるい言葉のメッセージも
時々は忘れずに挟み込んでくるしね
「ホント、もー、この女殺しぃ~!!」
って分かっていても、うふふ、悪い気はしないものよ♡
「次に会える月曜のこと、今からだけどとても楽しみにしてる♡
その日が生理予定日とのことだけど、生理痛とか体調が悪くなければ、
たとえ生理が来たとしても、会いたい!
その時はフツーにドライブとかHなしのデートしたいな♡
もう、月曜は愛しのキデのために、丸1日空けてあるんだ
…あ、今ので重く感じさせてしまったら、ごめんな 笑
直ぐに改めるから、だから俺のこと、捨てないで 笑」
「重くはないよ、むしろあたしに
もっとガツガツと来てみてって感じ 笑
どんな感じになるのか見てみたいわ 笑」
「まじ?もっとガツガツ行ってみてもいいの?
今までは『セフレやぞ、俺は!抑えとけよ』って
理性で抑え込んでいたところがあったけど
そのリミッターが段々と外れていくんだと思う
あ、でも、キデの家庭に迷惑を掛けたりとかはしないからね、絶対!」
「いーえ、そーじゃないわね
あたしが偉そーに、タツノスケ師範に
あたしへの想いを『自制するのを止めろ!』って言うなら
まずはあたしから、自分自身の、同じぐらい怖がってガードしてる、
タツノスケ師範への想いを解放してやらないとね
それをせずして、タツノスケ師範にばかり
『本気の気持ちを見せろ!』って言うのは、アンフェアだわ
あたしも、タツノスケ師範のこと、大好きよ
一番気になるメンズであるわ
セフレとかの枠組みなんか関係なく、1人の男としてね
でも、だからと言って、
1対1の関係にお互いを縛り付けるのは、しんどくてイヤなの
だけど!
少なくとも地元では、タツノスケ師範以外のメンズと
寝たいと思わない程度には
タツノスケ師範に夢中で骨抜きにされてしまってるわ
夫のこととかなければ、毎日でもべったりと会っていたいぐらい
あたしもタツノスケ師範も、
理由も特に分からず互いに惹かれ合ってる
それはそれでいいと思う
大事なのは、お互い同じタイミングで
同じことを感じていると言うことで
あとは難しいことなど考えず、恐れずに、
自分の心のままにタツノスケ師範を求めるわ」
「俺だけにしてって、縛るつもりはないよ
そーしてしまうと、キデの良さが消えてしまうと思うんだ
同じく惹かれ合っているのは嬉しいな
俺もこのまま思うままあなたを愛するし、求める
よろしくね♡」
そーやって、お互いへの想いが単なるセフレ以上のものであると
確かに確認し合った筈なのに、それでもどーしてなのか
あたしの中のタツノスケ師範に対する
違和感、苛立ちは一向に消える気配がなかったの…
to be continued…
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