10月に突入しても、秋めいた服装をするのが
ためらわれるほど日中はまだまだ蒸し暑い
あたしはマンションの高層階に住んでいることをいいことに
寝室の窓を開け放したまま寝てしまうのだが
そうすると大抵、忍び込む外気の冷気ですっかり体が冷えて
丑三つ時なんかに決まって目が覚めてしまう
それは同衾している夫にしても同じであったみたいで
2人して同時に目が覚めてしまった
あたしは夫のEDを憎んではいるが、夫自身は好きである
慌ててタオルケットをひっかぶってもぶるぶると震えるあたしは
ひとの体に優る、暖房器具はなしと思い込んでいるので
そんな時には、夫に腕枕をねだり、
しかもぴったりと背後から抱きすくめて貰う
永らくがんを患い、それの合併症で多種多様の病も患う
夫の体温はあたしよりもはるかにぐっと低く
たいてい氷の柱のようにひんやりと冷たくて
これでは一体、誰が誰を温めているのか分からんと
ひとり密かに苦笑してしまうわけだけど
それでも、あたしは大柄な夫の腕の中に
すっぽりとくるまれて眠るのも好きである
そして、そんな時に必ず思い出されることは
ジュディオングの「魅せられて」の1小節だ
「好きな男の腕の中でも違う男の夢を見る」
若かりしジュディオングはまさにこの1小節の
状況が全く持って理解できず
作詞家の阿木燿子にどのようにして歌えばいいのかと
泣きついたらしいが
それに対して阿木燿子は「そんなのしれっと歌えばいいのよ」と
言い放たれて困ったと話していた
でも、あたしはこの阿木燿子の言葉は体感的にとても良く分かると思った
そう、少なくともあたしという女は、
実にたくさん、しれっと好きな男の腕の中で
違う男のことを考えていたりするから
そして、あたしはこの記事を書きながら、独りほくそえむ
だって、きっとあたしが思っている以上に多くの女たちが
この記事を読んで、分かるわって言わんばかりに
ニヤリと一緒に共犯者めいた笑みを浮かべるのが
まざまざと見えるようではないか!
朝から心待ちにしてあたしの記事を読んでくれている
愛しきあたしのメンズ諸君の名誉のためにも
これだけはハッキリと断っておく
しがらみだらけの日常生活の時間をどうにかやりくりして
あたしとの非日常の時間を捻出してくれている
キミたちメンズと逢瀬している最中だけは
決してこんなことはないということ
あたしがキミたちに抱く愛情にたとえ優劣があったとしても
あたしはキミたちへの最低限の礼儀として
あたしは目の前にいるメンズに集中してその彼のことしか考えない
さて、話を戻して、あたしが夫の腕の中で今朝考えていた男とは
先日、あたしがここで「ポルチオの男」として描いた、
元・2代目第2愛人だった、マコトのことであった
日頃はこの男、あたしからの連絡には一切、
未読の既読のスルーで貫くくせに
あたしが「11月に上京することがある、
その時に逢瀬出来ない?」と
具体的な日時も挙げてLINEすると
現金なことにそのLINEだけにはちゃんと
「会える」と返事を寄越して来たからだ
せっかくありつける、あたしと言う女から
くいっぱぐれまいとして、そのあからさま過ぎる
彼のあたしへの欲望が実に愉快だなと
夫の腕の中でひとり悦に入っていたわけで
それから、あたしのMの奥がじんじんと疼いて
マコトのPがあたしのポルチオをくすぐるのを
うっとりと思い出していた
前回2人が共に過ごし、あたしが愛して止まない
パレスホテル東京の部屋を今回もあたしは手配したわけで
あたしの東男3人衆の1人、教祖様が帰るのを見送った後
あたしの夜伽係として入れ違いにホテルの部屋に訪れる
同じく東男3人衆のうちの2人目の男、マコトを迎え入れるのだ
そう、あたしの指示どおりに、避妊具と
酒豪の彼が1人で飲むアルコールだけを用意させて持参した彼を
きっとあたしは部屋のドアを彼のために開けた途端に
会えなかったこの間の、彼のあたしに対する非礼の数々を
責め立てるかのように懲罰的なキスの嵐を
彼の首根っこに両腕を回してひとしきり浴びせかけることだろう
おぉ、それから彼に言い訳やシャワーする暇(いとま)さえも与えずに
彼をベッドに押し倒すとあたしはその上にまたがり
彼のシャツのボタンをもつれる指で外しては
彼を全裸にするひまさえ惜しくてそのまま顔をうずめるのだ…
そんな幻想に人知れず酔い、あたしの上昇する体温とはうらはらに
いや、それゆえに一層際立つ、相変わらずの
氷の柱のような夫の腕の冷ややかさに
今更ながらにぞっとして
あたしはもういいと彼の腕を振りほどきながら
こうして同衾でなければ、
今頃、マコトを想って一人遊びをするのになと
少し恨めしく思いながらも、
再び浅い眠りに落ちてゆくのであった…
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