お昼になったら、少しは彼の気持ちも落ち着いているかも知れないと
期待していたあたしだったけど、それは虚しい願いだったわね
タツノスケ師範ってば、朝と同じテンションで
相変わらず、「他の男へ行けー!!」って怒鳴ってばかりだったの
しかも!!
タツノスケ師範は、午前中に電話を終えた後、
あたしと知り合ってからはずっとサイトなんてほったらかしだったのに
わざわざ彼はサイトにつなぐと、
よりによってあたしのプロフをチェックしていたのよ!
そして、彼をなだめよーとして、あれこれ言うあたしに、
彼は突然、こー切り替えして来たの
「…だったら、プロフの現住所を東京の住所に替えたのはなぜなんだよ?」
「え?」
あたしは、意外過ぎる彼の質問にキョトンとしてしまったわ
それから、慌てて、自分が昨夜、
確かにプロフの住所を東京に替えたことを思い出したの
あたしにとっては、余りに些細なこと過ぎたのと
そんなところまで彼がチェックしていたことに驚いてしまって
咄嗟には何の言葉も出なかったわ
「どーなんだよ?」
「…東京で滞在しているから、
現住所を東京に替えただけじゃない、ダメなの?」
「だから、どーして替えたんだって訊いているんだ!」
そーやって白を切ろーとしても、とてもじゃないけど
当然ながら彼はそれで納得してくれそーな感じではなかったわ
そーね、あたしはマコトと連絡を取ろーと画策している一方で
もーマコトとは会えそーにもないかもって諦めも幾分かあって
それなら、この東京でサクッと会えるよーな別のメンズを探そーかなとも
思い始めていた頃だったの
タツノスケ師範のことは好きで、一番愛している男ではあったけど
そんな彼から離れた、この非日常の東京で
あたしに束の間の夢を楽しませてくれる、
そんな夜伽の相手を求めているのも事実だったわ
でも、だからと言って、まだ何か具体的なアクションを
起こしたわけではなかったけど
東京在住のメンズを相手にするなら、
あたしも現住所を地元の住所から東京の住所に
変更した方が警戒されずに探しやすいかもって、
取り合えず住所だけホテルのある地域に変えてみたところだったのよ
言い訳をここでしっかりとさせて貰えば、
住変から先のことはまだ何も考えてはおらず
ひょっとしたら、住変だけで何もせずに
終わってしまっていた可能性もあったわけなの
でも、それじゃなぜ住変したのかって詰められると、
馬鹿正直なあたしはついつい
「そりゃあ、東京で出会いを求めるためよね」って
認めてしまったのよね
嘘なんか咄嗟につけるよーなタイプじゃないし
そーしたら、タツノスケ師範ってば、
鬼の首を取ったよーに
「ほらな!」って大騒ぎし始めたわけ
だからあたしもそこで反撃をしたのよ
「それじゃあ、あんたはどーなの?
あたしから他の女の連絡先を消せって何度も頼まれて
『分かった』と快諾してみせたものの
一向に全然消していやしないじゃないの!
それをせずして、どーしてあたしを責められるの?」
「うるさい!とにかく、他の男のところへ行けー!!」
そこをあたしがつつくと、彼ってば逆上して声を荒げてくる始末
うふふ、そこは彼も痛いところを突いて来たと図星で分が悪かったのかもね
そんでもって、ガチャンとまたしても彼から一方的に電話を切られたの
あたしは朝のこともあって、その後、電話をしよーとはしなかったわ
いずれにせよ、彼が酷い興奮状態にあるのは分かったから
それにあたしもズルいけど、あんたもズルいって、
これ以上、話し合いするのも馬鹿らしくなったのも事実だし
あたしは何気に自分のプロフを確認すべく、サイトを見たの
そーしたら、タツノスケ師範ってば、
そーやって自分で一方的に電話を切った後でも、
あたしのプロフを再度チェックしたみたいで
その後のKakaoでのやり取りでは彼からこー言われたわ
「今は信用できません
他の人いかないって言いながら、サイトしているのは幻滅しました
俺が電話切った後も、(サイトを)してるでしょ?」
あたしはサイトで日記も公開していたわけだし
その日記への反応やコメントをチェックしたりするので
それでサイトを見たりすることはしょっちゅうだったりするから
必ずしも毎回男漁りのためにサイトを見ていたわけでもなかったし
まだこの時点では具体的に男漁りだってしていなかったし
しよーかどーしよーかと迷っている段階だったのに
サイトを見たというだけで浮気者扱いされてしまうのも
あまりに早合点し過ぎていないかとも呆れてしまったわ
それにしても珍しーとも思ったけどね
大抵は、メンズの方が誰か女性とマッチングしても
だらだらと惰性でサイトをチェックし続けて
相手の女性から不信感を持たれるという話はよく聞くけど
うちはまさにその正反対だなーって他人事に思ったりなんかして
だからこそ、あたしもそんなタツノスケ師範が面倒臭くなって
衝動的にサイトで彼があたしのプロフを
これ以上チェック出来ないようブロックしたけどね
それにしても、あたしはこれ以上、何を言ったところで
もはや全て都合のいい言い訳にしか聞こえないだろーし
第一、その言い訳さえも聞いて貰えるよーな状態でもなかったので
やはり、これは別れるしかないのだろーと、もー腹も括ったわ
でも、別れるのなら別れるで、少なくともあたしは
これ以上為す術がなかったと納得してから別れたい
そして、別れるのなら相手から振られて別れたい
だって、あたしから相手を振って別れたなら
きっと未練で「やっぱ、今の別れはナシ!」なんて
みっともない振る舞いしてしまいそーだもの
だから、あたしはKakaoでだったけど、彼に念を押したのよ
「別れたいなら、あなたから言って
あたしもそれであなたを諦めるから」
「さよなら」
おぉ、それでも実際に彼から最後通牒突きつけられると、とても辛い!!
だから、思わずあたしも彼にみっともなくすがりついてみたりしたわけで
「確かに1人の男に縛られるのはあたしらしくなかった
ありがとう、気付かせてくれて
早速、これから今夜お相手してくれそーなメンズを探すことにするわ
それはそーと、あんたのPだけには未練があるから、
改めてその他大勢のセフレの1人としてどう?」
「せっかく性病検査して問題ナシだったからいいわ」
「あ、そ、うふふ、後悔するわよ。いいわ、それじゃね笑」
「うん、お元気で」
これは後で気付いたことだったのだけど、彼はこの時点で、
あたしのKakaoをブロックし、彼自身、
あたしと知り合ったサイトも即刻退会してしまっていたの
あたしよりもずっと長く利用してきたサイトだったにもかかわらず
それから、「せっかく知り合えた女の連絡先を消すのは勿体ない!」
と言って、一切ブロックとか削除したことなかったのにね
その当時はそんなことなど露知らず、あたしはあたしで
「立ち去ったバスと男は追いません、だって直に次のが来るから」
そー、うそぶくと、本格的に今夜夜伽の相手をしてくれるメンズを探すべく
サイトに再びつないだのよ…
to be continued…
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