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トーキョー・ラヴァーズ~その4~(東京愛人特集)

午前4時過ぎ

 

いつだってショートスリーパーのあたしは自然と目が覚めたわ

 

基本的にあたしは部屋のカーテンはしないタイプで

 

窓辺に近寄ってもっとよく外の景色を見よーとベッドから出た時

 

身にまとったシルクサテンのスリップドレスが

 

さらさらと衣擦れ音を立てながらあたしの体にくっついたり離れたりする

 

その滑らかで柔らかな感触を楽しんだの

 

今、あたしの体は五感をフル回転させて、

 

分かってはいるし自分で望んだことなのだけど

 

自ら飛び込んだ、この新しい環境に一刻も早く溶け込もうと

 

触れるもの、感じるもの、匂うもの、漂う空気感さえも

 

とりこぼすことなく敏感に反応して

 

貪欲に吸収しよーとしているのが感じられたわ

 

日頃はその香りの強さから遠慮しがちの

 

お気に入りのシャネルのパーリィーボディージェルを

 

これでもかって思う存分、手脚になすり付けて伸ばすと

 

その芳香はたちまちに部屋中に広がって、

 

気分は、そ、海外のラグジュアリーなホテルの

 

ホワイエにでもただずんでいる感じだったわね

 

いーじゃない、思いっきり、非日常って感じでw

 

ぺたぺたと裸足でふかふかのじゅうたんの床を窓際まで歩いたの

 

季節外れの暑さが残る11月初旬ではあったのだけど

 

空模様だけは正直で、11月らしく午前4時台は暗かったわね

 

まだおやすみモードのままで控え目な高層ビル群の明かりを

 

あたしは食い入るよーにしばらく見つめていたわ

 

どの瞬間の摩天楼もこの眼に焼き付けて

 

それをあの退屈で死にそーな地元の田舎に持ち帰り

 

日々を過ごすためのファンタジーの材料に是非ともしたいってね

 

それから思いついたよーに、突然バスルームへと向かい

 

バスタブにお湯を張り始めたのよ

 

 

もちろん、今となっては肌身離さず持ち歩く、

 

まるであたしのアクセサリーみたいな存在の

 

並々に注いだシャンパングラスも忘れることなくバスタブに持ち込むでしょ

 

音楽を聴きながら、たっぷりと2時間ぐらいは

 

徐々に白んでいく外の景色を愛でながら朝風呂を満喫したわ

 

濡れた体にバスローブをまとって、

 

湯上りの火照った体をクールダウンさせるべくバルコニーに出たの

 

 

あたしの大好きな朝焼けは柔らかなロゼカラー色で

 

あたしの目の高さにそびえ立つ、

 

優雅な丸の内のビルディング群はまだおやすみモードのままだけど

 

見下ろすと、皇居の周りをランニングしてる小さな人影や

 

おぉ、ビルの改修工事で働く人たちは既に忙しそーで

 

ちょこちょこと動く蟻の影のよーに見えたりするわ

 

そ、常に自分専用のヘルメットを携帯し、

 

いくつもの担当現場を行き来する

 

タツノスケ師範だってしかり、

 

既に彼は目覚めてどこかの現場に今頃たどり着いている筈よ

 

そんなことをぼんやりとバルコニーで考えていたりしていると

 

突然、あたしは彼が懐かしくなって、彼にKakaoを送ってみたの

 

「おはよーさん、あたしはいつものごとく、

 

早朝に目が覚めて朝風呂までとうに済ませて、

 

モーニングシャンパンを楽しんでるよ」

 

ちょーど、ここに載せた画像を彼に添付してね

 

だけど、待てど暮らせど彼から返事が来ない

 

あたしは焦れて何通目かのKakaoを彼に送り付けたの

 

「ね、まだ起きてないの?」

 

すると、午前7時前ぐらいに、

 

彼にしては少しぶっきらぼーな返事が返って来たわ

 

「起きた、睡眠薬飲んで爆睡」

 

この後は、前日に行ったパイプカットの手術の不快感、

 

違和感について話が続いて

 

表面上は淡々としたやり取りが続くのだけど

 

どーにもあたしは彼に違和感を感じずにはいられなかったわ

 

第一、あたしはそもそもそんな淡々とした、

 

うちの夫婦のよーな、そんな味気ないやり取りを望んではいない

 

そんな男は、うちの昭和枯れすすきの夫1人だけで充分な話だわ!

 

もっと、愛情に満ちた、イチャイチャした内容のものでも良くない?

 

実際、あたしが何度かそー仕向けてみても、

 

彼は相変わらずそれをスルーで

 

どーにも彼がよそよそしーというか、

 

何か突然見えないへだたり、壁を感じてしまったみたい

 

この後、あたしたちは電話でもおしゃべりをするのだけど

 

その間だってますます彼への何とも言えない違和感、

 

ザラザラとした不快感は膨らんでいく一方で

 

あたしはこれが一体何なのか、どーすればいいのか分からず

 

うろたえてる一方で、

 

「そーね、きっと彼はパイプカットと言う、

 

慣れない手術をしてしまったから、

 

それの違和感でちょっと気分が優れないだけよ」

 

って、あたしはそーやって全てを片付けてしまったの

 

だって、彼の姿を目前にすることが出来ない場所にいる

 

あたしにそれ以上、何が出来る?

 

人の心を読むなんて、

 

そんな傲慢なことはあたしには出来ないし

 

したいとも思わない

 

そもそも、あたしと彼とは感性も価値観も考え方も全く違う

 

そんなあたしが自分の価値観、考え方を一方的に押し付けて

 

彼の気持ちを推し量ってみたところで、

 

まず当たるどころか大抵、正反対のことさえ推測していたりする

 

もしも、本当にあたしに何か言いたいことがあれば

 

そのうちに言って来るでしょ、

 

だからそれまでは放って置こーと判断したのよ

 

彼とどこか上滑りな電話を終えた直後、その不快感を払拭すべく

 

あたしは顔色も変えずに静かにサイトの画面を開くと

 

あたしをブロックしているマコトのプロフをもう一度確認したの

 

フフ…やっぱり、一晩寝て確認してみても、

 

彼があたしをブロックしていることには変わりないか…w

 

昨夜は東京初日ということで疲れ果てていたし、

 

タツノスケ師範に対しても多少の貞操感を抱いていたから

 

敢えてそのままざわめく心のままで寝入ってしまったものの

 

今朝、一晩経っても、マコトへの好奇心は変わらずにあったわ

 

日和見的で非常にぐらつきやすい、

 

あたしのタツノスケ師範に対する貞操感

 

今朝もつつがなく貫けるほどには、

 

タツノスケ師範からたっぷりとした愛情を掛けて貰えなかったし

 

あんなに出張前にタツノスケ師範とセックスをしたものの

 

そーそ、彼にしては珍しく中折れなんかしたりして使い物にならず

 

必ずしもあたしの心底満足いくセックスではなかったのよね…

 

そ、最近、タツノスケ師範とのセックスに

 

見えない小さな不満が蓄積されてくすぶっていたのも事実だし

 

そんなこんなで、あたしは、心身ともに女として飢えていたわ

 

貞操感とか何とかの前に、まずあたしが女として満たされるのが一番でしょ?

 

まず、自分が満たされないと、他人に優しくなんて出来ないし、

 

愛情を注ぐなんてことも出来ないの

 

自分を偽り、自己犠牲までして、他人に優しい振りをする、

 

そんな慈善事業、あたしはするつもりはありませんからね

 

第一、相手にだって失礼だわ、

 

慈善事業だなんて、一体何様のつもり?!

 

それに、あたしってば、

 

良くも悪くも狩人気質なわけで

 

こーして、あからさまに拒絶されてしまうと

 

俄然、狩人体質に火がついて

 

否応なしに燃え上がってしまうわけよ

 

そーそ、サイトW独自のシステム

 

ブロックされてしまった相手に

 

「泣きの1通」定型文のみだけど特別に

 

1だけメールを送ることができるシステムあるのよ

 

あたしもかつて、ブロックしたメンズからそれで

 

泣きの1通のメールを貰ったことがあったっけ

 

うふふ、まさかこのあたしが屈辱にも

 

そのシステムを使うことになろーとはねぇ…w

 

我ながら可笑しかったわよ

 

でも、そこは好奇心旺盛なあたしのこと

 

「何事も体験よ!」って、興味津々で利用してみたけどね

 

その定型文って、こんな感じだったわ

 

「ごめんなさい

 

先ほど伝えた内容では言葉が足りずに

 

誤解させてしまったかもしれません…

 

改めて説明をしたいので、一旦ブロックを解除して

 

またメールをさせてもらえると嬉しいです」

 

ほーんと、良く出来た定型文、良く出来たシステムだこと…w

 

とうとう、あたしはマコト

 

泣きの1通のメールを送り付けたわけだけど

 

さて、マコトはこれに対して、一体どんな反応を示すのか?

 

そーそ、最近のあたしの口癖は

 

「伸(の)るか反るか?!」だったりするけど

 

まさに、送信ボタンを押したとき、

 

あたしの気持ちはそれそのものだったわね

 

きっと、ここ一番で興奮して昇天寸前だったかも知れない

 

あたしは薄々、本能的に自分のそんな気質を知っているからか

 

実際のギャンブルには決して近づかないけど

 

あたしはやっぱり、押しも押されもせぬ天性のギャンブラーなのよ

 

結果や儲けなんかはどーでも良くて、

 

この「伸るか反るか」に賭ける一瞬が

 

きっとゾクゾクするほどに大好きなのだと

 

ふぅ、実に困ったもんだ…

 

でも、これがあたしなんだから、仕方ないよねーw

 

to be continued…

 

 

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