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トーキョー・ラヴァーズ~その11~(東京愛人特集)

新宿駅から少し長過ぎたタクシー乗車の後で

 

あたしの滞在する、パレスホテル東京にたどり着いたわ

 

ホテルの正面玄関にタクシーを着けると

 

さっとドアアテンダントが近寄ってすぐ外で待機してくれてる

 

車内であたしは散々たる顔合わせの結果にぐったりとしていたけど

 

きびきびと動いてあたしのために気持ちいい接客をしてくれる彼らや

 

愛して止まない、このホテルにあたしも敬意を払って、

 

さっと表情を切り替えると、背筋を伸ばしておもむろに車から降りたの

 

もちろん、彼らに感謝の気持ちで微笑むことも忘れずにね

 

あたしは神社仏閣へはあまり参拝しないタイプではあるけれど

 

パワースポットとは何もそれだけじゃないと思ってる

 

こーして、上質なホテルだって、立派なパワースポットになり得る筈

 

そ、そこには上質な気というものが循環していると、あたしは信じているの

 

あたしは決して褒められたよーな人間でないことは承知しているわ

 

だからこそ、せめて、物腰だけでも

 

このホテルのパワーにあやかってエレガントでありたいじゃない

 

あたしは部屋にたどり着くと、真っ先に洋服を脱ぎ捨て

 

着心地のいい、シルクサテンのスリップドレスとナイトガウンに着替えたの

 

それからお気に入りの銘柄のシャンパンをハーフボトルでルームオーダーしたわ

 

メンズに関しては、実に3の空振りに終わってしまったから

 

それ以外で徹底して自分を甘やかして癒したいと思ったのよ

 

だけど!!

 

今夜は誰か見知らぬ、東京メンズとうたかたの夜伽を楽しもうと

 

すっかりその気で盛り上がっていただけに

 

そーね、男で埋めるべき欲望の穴はやはり男で埋めないと

 

いくらお酒などで埋めようとしても埋まりやしない

 

はー、今夜程、あたしは

 

「人望ならぬ、男(メン)望がないわ!」

 

と嘆いたことはなかったわね

 

だって、そーでしょ?

 

あたしのLINEKakaoにはもはや誰だったか、その顔さえも思い浮かばない

 

おびただしい数のメンズの登録名が羅列されているものの

 

今夜みたいな、人恋しい夜に話し相手を務めてくれそーな男が

 

人っ子一人見つかりやしないのだから!

 

話を聞いてくれそーでも既婚者だとか…ね

 

だから、「今夜は徹底してメンズのことで振りに振り回されてやる!」って

 

既に決めていたあたしは、折からのシャンパンの酔いも手伝って

 

うふふ、実にみっともなく、気が付けば今朝、別れたばかりの

 

タツノスケ師範Kakaoを数通立て続けに送っていたのよ

 

「あはは、誰も(メンズ)が捕まらない!

 

相手の印象悪くて、顔合わせするなり別れたわ

 

ね、今とてもさみしーから、話し相手になってくれない?

 

昼間の話は一切無しで、ね、お願い!」

 

「あたし、ホントに今夜、とてもさみしーの

 

難しいことを言わずに、付き合って」

 

元、あたしのセフレからの愛人メンズだったとは言え、

 

一応今朝別れたばかりで、それも関係なくなったのだから

 

ここはもー少し他人行儀で対応すべきなのかも知れないと

 

ヘンなところにこだわって、後から慌てて

 

「お願いします」なんて付け足してみたり

 

しばらく待ってみても、なしのつぶて

 

昼間のことを考えると、当たり前と言えば実に当たり前の反応

 

実は既にこのとき、あたしはタツノスケ師範から

 

おおよそ平素の彼らしくなく、

 

ブロック削除されてしまっていたのだけどね

 

あたしもその可能性を少しは考えたりしたものの

 

だけど、彼は二言目には

 

「せっかく知り得た女性の連絡先を消してしまうのは

 

実に勿体ない!」とか

 

「キデと俺は、途中で紆余曲折あったとしても

 

最終的にはやっぱりお互いのことがいいって思えて

 

何だかんだ言っても離れられないと思うんだ

 

だって、こんなにも体の相性がいいんだぜ?」

 

とか良く言っていたものだから、

 

やっぱりブロック削除はないだろーってね、高を括っていたわ

 

だから、あたしは彼からの返事を待たずに次のKakaoを送り付けたの

 

「無視されてもいいから、こーなったら一方的に話してやる!笑

 

他の男を漁りながらも、タツノスケ師範を超えるヤツはいないだろーと

 

期待はしていないわ

 

実際に探し出したのは、今朝の電話でケンカをしてからよ

 

朝の電話でモヤモヤ、ムラムラしていたしね

 

だけど!

 

本気で会うつもりはなかったのよ

 

『いけない!』って踏みとどまっていた感じ

 

逆ギレされるまではね

 

今更、弁解しても仕方ないけど、

 

それだけはあたしの名誉のために信じて欲しいわ」

 

ホテルの薄暗い間接照明とあたしの近視、乱視、老眼の三つ巴の目では

 

Kakaoの既読か未読か判別しにくく、むしろ読み違えて

 

あたしはてっきり彼は既読してくれていたものだと思い込んでいたの

 

返事は寄越さないけど、あたしのメッセージを確認してくれてはいるんだって

 

だからそのまま調子に乗って、

 

あたしは今朝別れたばかりのタツノスケ師範の携帯に

 

電話をするという暴挙にも出たのよ

 

やっぱり、こんな行動って平素のあたしならとてもじゃないけど考えられない!

 

あたしはメンズと一旦別れてしまうと

 

「走り去ったバスと男は追いかけない、だって次のが直ぐにやって来るから」

 

とうそぶいて、別れた途端に未練たらしく連絡とか一切しないもの

 

だけど!!

 

あはは、Kakaoの返事すら寄越さないタツノスケ師範

 

当然、あたしからの電話なんかに出るわけなどなく

 

そんなことは織り込み済みだったあたしは

 

数回彼にかけて留守電に切り替わるのを待ってメッセージを吹き込んだの

 

「あたし、さっき、サイトで知合った男と顔合わせしたのだけど

 

これがまた、最悪な男でさ、会うなり別れてしまったのよ

 

だから、急に手持ち無沙汰になってしまって、さみしーの

 

ね、だから、ムリなお願いだとは分かっているけど、

 

今夜だけ話し相手になってよ、ね、お願いー!」

 

そーね、当然、待てど暮らせど、彼から連絡はなかったわ

 

あたしとタツノスケ師範が付き合っていた時、

 

特に彼は瞬間湯沸かし器メラメラのよーに、

 

容易く感情を激化させるあたしの取り扱い方として

 

あたしをちょっとだけ放置してガス抜きを1人でさせていたのね

 

だから、あたしも、それにならって、

 

昼間の電話からかなり時間が経ったものだし、

 

ひょっとしたら、タツノスケ師範の気持ちも

 

幾分落ち着いているのではと

 

期待しているところもあったのよ

 

もちろん、あたしがそんな偉そーなことを言えた義理ではないと

 

百も承知の上でね

 

あたしがかけていたのは、会社から支給されてる、

 

タツノスケ師範ガラケー携帯

 

だって、それは営業用仕様だったから通話料無料らしく

 

その番号しか知らなかったの

 

そんでもって、彼は留守電を聞いてあたしに直ぐさま

 

削除してしまったKakaoではなくて

 

ショートメッセージをあたしに送り付けたらしーわ

 

「会った男が最悪で直ぐに別れたからと言って

 

俺にいちいち電話してくんな!」ってね

 

そして、あたしからの反撃メラメラの電話を待っていた…

 

だけど!!

 

そのガラケー携帯から送られた、

 

タツノスケ師範のショートメッセージは

 

あたしのスマホに届くことなく、それを知らぬ彼は

 

ついにあたしからの電話もかかってくることなくて

 

あたしの関心が彼からすっかり離れてしまったと判断していたの

 

一方、そんなことなど露知らぬあたしは、

 

こーしてタツノスケ師範があたしの相手をしてくれないと分かった以上

 

さて、このやりきれない思いをどーやって晴らしてやろーかと思いあぐねたわ

 

「それにしても、何て日、何て夜なの!」って呪わしく思いながらね

 

だって、そーでしょ、メンズに関して、

 

やることなすこと全てが裏目に出て空回りばかり!

 

…そーね、これはもー、このままじっとしていろと言う、

 

M神様の思し召しかも知れないと思い始めた頃、

 

あたしのKakaoの受信を知らせる音が鳴ったのよ…

 

to be continued…

 

 

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