伊勢丹の３Fの女性トイレ前で落ち合った、
あたしと浦和リーマンの彼とエレベーターを目ざしたの
彼はあたしの少し前を時々振り返りながらすたすたと歩いて行く
あたしもそんな彼に遅れまいと早歩きでついて行く
エレベーター前で待っている時も彼はあたしに話しかけるどころか
あたしの方を見ることもなく、じっとエレベーターの表示だけを見てる
さもサイトでマッチングしましたって体の会話を聞かれたくないのかな
それで、敢えてデパートの人混みの中では黙っているのかなって最初は思ったの
だけど！！
エレベーターで2人きりになっても、その態度を崩さない彼に
あたしは段々と違和感を感じるよーになっていたわ
伊勢丹の外に出ると、雨はしたたかに降り始めていて
彼はそんな中、傘もささずにやはりどんどんとホテルを目指して進んでいく
あたしは慌てて、カバンの中から折り畳み傘を取り出すと広げたの
その間も彼はあたしのことを振り返ることなく、1人で進んで行くわ
もー、その頃には違和感が不審感にまで変わってしまっていて
もーすぐそれも嫌悪感に変わりそーな勢いだったわね
だって、そーでしょ？
いくらあたしたち、食事とかの白々しい工程を省略したとしても
お互いのことを何も知らない赤の他人同士なのだから
セックス前にもー少し、本名を除いた自己紹介とか
あるいは他愛ないスモールトーク（世間話）とかして
交流を図ってもいいのでは？と思ったりしたの
これではいくら何でも愛想がなさ過ぎる！
男性は何も知らない、初対面で会うなり、ろくろく言葉を交わさずに
見知らぬMに自分のPを挿し込むことが出来るのかも知れないけど
いくら、女性の割にはセックスに愛情などの精神性を求めないあたしだとしても
ここまで露骨なのは悪意さえ感じてしまいそーになるわ
そ、露骨にあたしのこと、「無料風俗」扱いしていない？
せめて最低限の敬意ぐらいあたしに払って欲しかったわ
とてもじゃないけど、あたし、こんな輩とは到底セックスを楽しめる気がしない！
そーあたしは考えると、次の瞬間にはもー行動に移していたわね
あたしは小走りで彼の隣に並ぶと、彼にこー言ったの
「…あの、あたしと会って、ガッカリされてませんか？」
彼は突然のあたしの発言にちょっとびっくりしたよーな顔をして見たけど
彼もこー言って来たのよ
「…いいえ、そんなことはないです、むしろ、そちらこそ、大丈夫ですか？」
「大丈夫です…」
思いがけない質問返しに、咄嗟にあたしも大丈夫だと答えたものの…ね？
どーにも気分が盛り上がらずに、どんどんテンションは下がっていく一方だったわ
それを彼も察したのか、それとも彼自身もまさに同じ気持ちだったのか
彼は相変わらずあたしの少し先をぐんぐんと進んでいたけど
突然立ち止まって、あたしを見るとこー言ったのよ
「それなら、もーここで止めにしましょーか」
「そーですね」
あたしもどこかホッとして彼の提案に賛成したのは言うまでもなかったわ
そして、あたしはそのまま新宿駅東口へと向かうと、タクシー乗り場を探したの
雨だったし、金曜の夕方ということもあって、駅構内も大混雑していたし
そんな中、いくつも乗り換え、乗り継ぎをして
ホテルに戻るのはうんざりだったのよ
既にタクシー乗り場にも長蛇の列が出来てはいたけれど
あたしも辛抱強く待ったわ
さすが大都会の駅というだけあって、
ひっきりなしにタクシーがやって来ていたしね
「今日は何て呪われた日なのかしら…
朝から嫉妬で怒り狂う男と別れ話で始まり、
その次は煮え切らない男に、
あたしに敬意を全然払わない男…ホント、ハズレばかり
うふふ…何だか可笑しーわ
だって、そーでしょ？
追えば追うほど、スルスルとメンズが逃げて行くのよ
一体、何なの、これ？
いいわ、こーなったら、今夜これからも
思い付く限り、もっとみっともないことを散々してやって
徹底してメンズのことでバタついてやる！
そーよ、今日一日はメンズのことで
徹底して振り回されてやろーじゃないの！！」
あたしは人知れずそー決心すると、
タクシーの中から、賑やかなネオンに照らし出されて赤く光る、
雨模様の空を見上げながら、いつしか不敵の笑みを浮かべていたわね…
to be continued…
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