マスター、彼女にはさっきと同じジン・リッキーを
僕にはマティーニを頼む
ここのジンはウッディな香りが広がって
ホント、私の好きな味だわ
それは良かった
ほら、キデは白檀の香りが好きって言ってただろう?
それで、ここのジンもきっと気に入ってくれると
思っていたんだ
うふふ、そーねぇ、私、雨上がりの木の若葉の匂いで
実は欲情してしまったことがあるの
若い男の体臭をつい連想してしまってね
アハハ、キデは感じやすくて正直な女性なんだな
実際、白檀も媚薬の成分として使われているしね
木の香りに男性的なものを連想したとしても
不思議ではないな
うふふ、カイは私が何を言っても
そーやっていつでも穏やかに受け入れてくれるのね
…でも、辛辣にイジられるのもキライじゃないけどね
ゆーやとか私の女友達が私にするみたいにね
もちろん、そこには愛情があるっていうのが大前提だけど
だって、人を褒める言葉ってば意外と
バリエーション少なかったりするけど
辛辣にひとを皮肉るときの言葉ってば
千差万別、その人の世界観がにじみ出てて
その個性的な言葉のチョイスに
ついつい感心して大笑いしてしまうのよ
でも、それにしても不思議だわ、
こちらも落ち着いた気分になってくるの
それってば、カイの職業柄も関係してくるのかしら?
おいおい、俺は今はカウンセラーじゃないぞ
1人の男としてキデと会ってる
それにカウンセラーとクライアントの恋愛はご法度だ
それにしても、キデは自己肯定感が高い証拠だな
辛辣にイジられるのがたまらないなんてな
あら、そーかしら?
それは面白い見解ね
それはそーと、私も怖いもの知らずで、
実に本能のおもむくままに
色んな男性を誘惑してきたところがあるけど
そんな私でさえ、カウンセラーとクライアントとの
恋愛は引いてしまうわね
クライアントがカウンセラーに恋愛感情を
持ってしまうのは容易に想像出来ても
カウンセラーがそれに応えてしまうのは
プロとして失格だと私は軽蔑してしまうかも
…そー言いながら、うちの妹は
自分の主治医の精神科医とかれこれ
10年以上不倫関係を続けているけどね
最近ではその精神科医の愛人が
うちの母親に、気性の激し過ぎる妹の件で
相談に乗ってもらっているみたいよ
結構その世界では重鎮なのに
せっかくの肩書も形無しね
アハハ、特に珍しいことでもないよ
精神科医あるあるだよ
それはそうと、1つキデに
訊いてみたいことがあるんだ
何かしら?
トオル君と別れたのは知っているけど
今はどんな気持ちなんだい?
そーねぇ、別れを決めた瞬間に
目の前に大きなエレベーターが
出現して、それに乗って、
ぐーんと急上昇で高層階まで
運ばれた気分かな
エレベーターから出ると、
守護天使が待っていて
「次元上昇の世界へようこそ」
って言われたわ
そこはとても明るくて軽やかで
わくわくするよーな世界なの
より、自分が自由になれた気がしてるわ
だから、時々、何かのきっかけで
トオルのことを思い出すことはあっても
トオルと付き合っていた頃には
決して戻りたいとは思わないわね
そーね、未練が全くないの
自分でも驚くぐらいよ
そうか、それなら良かった
じゃあ、改めて俺が第3愛人として
立候補してもいいわけだよな?
…そーねぇ、正直、どー答えたらいいのか
分からないの
まず、第一に第3愛人の席にケチが付き過ぎて
本気で永久追放・永久欠番にしよーかと
考えていたりしてるから
そんな縁起悪い席に、大切なカイを据えたくない
っていうのがある
次に、私は恋愛では肉食ならぬ、狩人体質だから
男性からの口説きに慣れていなくて
正直、自分の気持ちを掴みきれていないの
カイのことはとても気になっているけど
いきなり愛人候補って言われてしまうと
戸惑ってしまうところがあるわ
だって、私は恋愛至上主義者ではないから
先に恋愛関係というフォーマットありきで
カイとお付き合いするのはイヤなの
まずは形にこだわらずに、
カイという男性自身を楽しんでみたいの
だから、ここで私から1つ提案があるわ
何だい?
過去記事でも書いたことがあるのだけど、
私たちの間でも是非とも欧米の
「デーティング期間」を設けてみたいの
そしてその期間中に、
カイと私が相手に求めるもの
与えられそうなもの
お互いに会いたい頻度、会えそうな頻度
どのよーな逢瀬にするのか…etc
についてすり合わせをして
それからメイクラブで体の相性も
チェックするのよ
そーやって、ある程度、見極めてから
愛人にするかどーか決めたいの
そーねぇ、これってば、ある意味、
「愛人トライアル」ってやつね
特に期限は設けてはいないけれどね
そーよ、今思いついたばかりだけど、
このトライアルをKidechan’s men に
導入することで、
「愛人もれなくポンコツ化問題」
も画期的に解決するかも知れないわ
それじゃ、俺がその、
「愛人トライアル」の記念すべき
第1号受験者となるのかな?
…でも、正直、複雑な心境だよ
俺はポンコツ愛人にならない自信あるのにな
ねぇ、キデ、そう思わないか?
うふふ、みんな最初はそー言って、
実際、粒よりなメンズばかりだったのよ
それが次第に、気が付けば、
みんな一様にポンコツ化してくるの
どーしてかしら?
みんな最初は、Kidechan’s men で
一番の愛人になってやる!って
それぞれ闘志を燃やして加入してくるのだけど
でも、Kidechan’s men 内部では
メンズによる競争とか足の引っ張り合いとかが
皆無なものだから、
これはメンズが実際に口々に言うことだけど
居心地良すぎて、
そのうちに馴れ合いになってくるのかな
ヘンな連帯感で結束してしまい、
気が付けば「みんな仲良くポンコツ化♪」
って感じになっていくのよ
ねぇ、キデ、この日曜に会えないかな?
俺の中では、キデこそ、俺の求めていた人だって
揺るぎない確信があるからね
会える時に少しでも会いたいんだ
日曜ねぇ…いいわ、会いましょ
そーね、今、思いついたけど、
日曜に早速、私たち、メイクラブをしてみましょ
気になる気持ちがあってまだどこかで
迷っているのなら、この際、難しいことは
考えずに、体にも訊いてみましょ
私、思うの
人は社会で揉まれるうちに
肩書とか建前…とか実に色んな鎧をつけてしまって
自分の素直な気持ちが全然見えなくなってしまう
私たちを悩ます数々の悩みだって
そんな鎧を全部取り去ってしまえば
実はとてもシンプルな問題だと思うの
「好きか、嫌いか」「したいかしたくないか」
この2項目でさっと片付く問題では?って
思っているの
そしてその自分の本音を確認したら
それを実現すべく、
後から色々と手段を考えたらいいってね
そして私はまだ自分の気持ちを掴めずにいる
その気持ちを確かめるために
視点を変えて、実践の場に自分の身を置いて
自分の体にも訊いてみよーと思ってる
ホント、その程度のカジュアルさでいいと思うの
…それなら、今夜このままメイクラブをするのは
どうかな?
うふふ、それはダメ!
私、メイクラブの前にはお酒は飲まない主義なの
感度も鈍るし、第一、なし崩し的に雰囲気で
しちゃうって感じがイヤなのよ
するなら、「するんだ!」って確信をもって
臨みたいの
同感だね
あ、キデ、あそこに月が見えるよ
あれは…新月かな?
ホント、私の好きな、
爪の切りくずみたいな新月ね
うふふ、何だか幸先良さそうだわ
爪の切りくず…w
そういう自由な発想が出来るところが好きだよ
さ、もう一度、乾杯をさせてくれ
これから始まる、俺たちの
「愛人トライアル」に乾杯!
うふふ…乾杯♡
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